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2008年08月26日(火) 08時26分

プリウスなど10車種値上げ トヨタフジサンケイ ビジネスアイ

 トヨタ自動車は25日、「プリウス」などのハイブリッド乗用車2車種と商用車8車種の国内販売価格を9月1日から1・0〜4・1%値上げすると発表した。鋼材などの原材料費が上昇しているためで、モデルチェンジに合わせたタイミング以外で乗用車を値上げするのは、1974年以来34年ぶりとなる。

 乗用車では「プリウス」と「ハリアー」のハイブリッドモデルを3・0%値上し、プリウスは6万8040〜9万7650円高くなる。商用車は「ハイエース」などバン4車種とトラック「ダイナ」などを平均2・0%値上げする。当初は高級車の値上げも検討したが、販売低迷に拍車がかかる恐れがあると判断し今回は見送った。

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 ■ハイブリッド限定“誤算” 他社、転嫁進まず業績悪化懸念

 値上げ対象車種を慎重に検討してきたトヨタが、乗用車ではガソリン高騰で人気が高く値上げの影響をほとんど受けないと“自負”するハイブリッド車に限定したことで、その動向をうかがってきたライバルメーカーの対応が次の焦点となる。コスト上昇を転嫁しなければ業績は圧迫されるが、値上げに踏み切れば、新車販売の一段の冷え込みは確実というジレンマを抱えるなか、他社もトヨタと同様に幅広い車種での値上げは見送らざるを得ない状況だ。

 トヨタは10車種を値上げ対象としたことについて、「鋼材やレアメタル(希少金属)の使用量が多い」と説明している。

 もっとも、当初は「クラウン」などの高級車を含めた幅広い車種の値上げも検討していた。ハイブリッド以外の乗用車の値上げを見送ったのは、厳しい国内販売の現場に配慮せざるを得なかったためだ。

 今年1〜6月の国内全体の新車販売台数(軽自動車を除く)は3年連続の200万台割れ。「1%の値上げで販売台数は1%落ちる」(業界関係者)といわれ、販売不振に拍車がかかるのは確実だ。“販売のトヨタ”を支え、強い発言力を持つ系列ディーラーの反発も大きく影響したとみられる。

 結局、トヨタが下した決断はライバル車種が存在せず、「黙っていても売れる」(幹部)というハイブリッド車の限定値上げの“軟着陸”だった。

 自動車メーカーにとって、原材料高への対応は、この数カ月間もっとも頭を悩ませてきた最重要課題だ。自動車用鋼板は毎年のように値上がりを続けており、トヨタの場合、この3年間で「1台当たり6万円のコスト増」(幹部)を合理化などで吸収してきた。

 しかし、今年5月の鉄鋼大手との鋼材価格交渉は約3割の値上げで決着。「原価低減の努力で吸収できる範囲ではない」(カルロス・ゴーン日産自動車社長)との悲鳴が上がる。

 日本経済を牽引(けんいん)してきた大手自動車8社の09年3月期の業績予想は全社が減益を見込んでいる。コスト上昇分を転嫁できれば、業績悪化に歯止めをかけることができるだけに、「リーダーが動かないと値上げはできない」(ゴーン社長)と、トヨタの動向をかたずをのんで見守っていた。

 トヨタの限定値上げは、他社にとっては“誤算”といえそうだ。ホンダは従来通り全面改良時や新車発売に合わせて価格転嫁する方針を崩していない。「いずれやらないといけない」(首脳)としてきた日産やマツダが幅広い車種の値上げに踏み切れば、トヨタやホンダにシェアを奪われるのは必至。トヨタと同様に見送りを迫られる可能性が高く、業績の下振れ圧力が一段と強まりそうだ。(福田雄一)

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