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2008年08月25日(月) 22時09分

海自3曹自殺で賠償命令 国に350万、福岡高裁中国新聞

 海上自衛隊佐世保基地(長崎県佐世保市)の護衛艦さわぎりの艦内で一九九九年、男性三等海曹=当時(21)=が自殺したのは上司のいじめが原因として、宮崎市の両親が国に二千万円の賠償などを求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は二十五日、請求を棄却した一審長崎地裁佐世保支部判決を変更、三百五十万円の支払いを命じた。

 判決理由で牧弘二まき・こうじ裁判長は「三曹はうつ病が原因で自殺したと認められ、その原因は上司の侮辱的言動によるストレス」と認定。「上司の言動は三曹をひぼうし、心理的負荷を過度に蓄積させるような内容で、指導の域を超える違法なものだ」と指摘し、自殺と因果関係があると判断、国の安全配慮義務違反を認めた。

 両親側弁護団の西田隆二にしだ・りゅうじ弁護士は「国家公務員の心理的負荷に対する国の安全配慮義務違反を認めたのは初めて。事件の問題点を裁判所がきっちり見直した意義のある判決だ」と評価した。

 弁護団によると、遺族がいじめ自殺などを主張する自衛官の訴訟は横浜地裁や静岡地裁浜松支部などでも係争中で、審理に影響を与えそうだ。

 控訴審で高裁は両親側の申し立てを認め、三曹の勤務調査表や班長が三曹の職務状況を記した手帳、海自が作成した事故調査結果の一部について国に開示を命令していた。

 判決によると、三曹は九九年十一月八日、四国沖で演習中の艦内で首つり自殺した。上司は同年八月下旬以降「三曹失格だ」「バカかおまえは」などと言い続けた。

 二〇〇五年六月の一審判決は上司の不適切な言動は認めたものの「指導の範囲内。技術習得の遅れに焦り、精神的疲労を募らせたためと推察される」と自殺の原因を判断していた。

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200808250262.html