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2008年08月23日(土) 20時48分

<忘れない>広島女子高生刺殺 父、情報求めブログ毎日新聞

 髪の毛を逆立てた男の似顔絵がある。「いったいお前は誰なんだ」。04年10月に殺害された広島県廿日市(はつかいち)市の高校2年、北口聡美さん(当時17歳)の父忠さん(50)は怒りを押し殺して問う。聡美さんの祖母や妹に顔をさらしたのに、逃走したままの犯人。「一番悔しいのは、私がこの男を見ていないことです。こんなに捜しているのに、道ばたですれ違っても分からない」【矢追健介】

【関連動画】広島女子高生刺殺、父が語る癒えぬ悲しみ

 事件の日。聡美さんは学校で試験があったため、いつもより早く昼ごろ自宅に帰った。「4時ごろまで寝るから」。そう言って離れ2階の自室に向かった。3時ごろ、悲鳴を聞いた祖母らが母屋から駆けつけると、逃げる犯人と鉢合わせし、祖母も刺された。妹は近所に逃げ込んだ。見たことがない若い男だった。体はがっちりしていたが、体の割に顔は小さかった。

 「こんな姿になってしまって……」。葬儀の後、遺骨を抱えた忠さんは、木箱に納まった愛娘の軽さを両腕に感じ、胸がつかえた。数カ月前、体育の時間に靱帯(じんたい)を切った聡美さんをおんぶしたときは、あんなにずっしり重かったのに。「それが物も言わない」

 翌年7月4日の聡美さんの誕生日。忠さんは、聡美さんの携帯電話にメールを送った。「誕生日おめでとう!」。聡美さんとは、毎年お互いの誕生日にお祝いのメールをやりとりしていた。しかし、返信があるはずもない。その寂しさが怖くなって、次の年からはメールが送れない。今でも聡美さんからもらったメールを思い出すだけで、息が詰まり、苦しくなる。

 似顔絵からしか知りようのない犯人は、怒ったように見える。忠さんは、これは事件を起こした直後の興奮した顔で、普段はもう少し優しい感じだと思っている。「悪い子というより、普段は普通にしていて、何かをきっかけに急にキレてしまう、そんな感じかもしれない」

 少しでも犯人の情報がほしいと、事件翌年の年末、似顔絵や犯人の特徴を掲載したブログ「SA・TO・MI〜娘への想い〜」(http://blog.goo.ne.jp/npo−friends)を開設した。今でも北京五輪や天気など、日ごろの話に交えて聡美さんの思い出を書く。「遠慮しないで連絡してほしい。たとえ間違っていたとしても、教えていただいた勇気に感謝します。だから、どんなささいなことでもいい。話してほしい」

 【ことば】広島県廿日市市の女子高生刺殺事件

 04年10月5日午後3時ごろ、広島県廿日市市上平良の会社員、北口忠さん(50)方の離れで、長女の県立廿日市高2年、聡美さん(当時17歳)が男に刺殺された。男は、騒ぎで駆けつけた祖母(76)の胸も刺して刃物を持ったまま逃走した。祖母は一時重体になったが一命を取り留めた。

 <犯人の情報>

【目撃情報】20歳ぐらい、身長165センチ前後、がっちり形。目が細く、ほおにニキビのような跡。当時はやや茶髪で髪を立たせていた

【服装】黒いよれよれのTシャツ。黒い綿パン

【足跡】ダンロップ製の運動靴(約26〜27センチ)

 ●犯人の情報をお寄せください。〒100−8051(住所不要) 毎日新聞社会部「忘れない」係。ファクス(03・3212・0635)、Eメール t.shakaibu@mbx.mainichi.co.jp。廿日市署捜査本部(0829・31・0110内601)。

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