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2008年08月22日(金) 12時00分

「地球の裏側から無人航空機でミサイルを発射する」兵士たちのストレスWIRED VISION

地球の真裏から無人航空機を操作するのは、それがあまり重要性のない軍務であれば、楽な仕事と考えられていた。しかし、イラクやアフガニスタンでの戦争が長期化し、衛星通信で操作する航空機への依存度が高まったため、米空軍の司令官は、「遠隔操作を担当する兵士の精神的な緊張を和らげる手助け」を、牧師や心理学者、精神科医に求めざるを得なくなった、とAP通信が報じている。

ほんの数年前、無人航空機(UAV)の操縦士は「戦闘に参加しても、夜は家に帰り、妻や子供の顔を見ることができる」と得意げに話していた[UAV『MQ-1 Predator』は、レーザーガイドのミサイル『ヘルファイア』を搭載しており、米国にある空軍基地から、衛星経由でイラクへの攻撃が可能]。

しかしそれ以後、遠隔操作の偵察機の需要が急激に増加し、操縦士の労働時間もどんどん伸びていった[2005年のワイアード記事によると、2002年には利用UAVは100機以下だったが、2005年には約1200機利用されていたという]。そして、操縦士たちは自らを「終身刑の囚人」にたとえるようになった。

これは、いささか大げさな泣き言といえる。操縦士は、椅子に縛られているにしても、米陸軍や米海兵隊に比べると恵まれている。15ヵ月にわたって戦場に派遣されることもなければ、まずい食事を強いられることもない。自分や友人が爆弾で吹っ飛ばされる心配もない。

それでも、戦争と平和を絶え間なく行き来すれば、ほかとは異なる精神的な負担がのしかかる。「いつミサイルを発射してもおかしくない状況から、次には子どものサッカーの試合に行く。まったく懸け離れている」と、Michael Lenahan中佐はため息をつく。

戦闘機に乗っている場合には、「時速約800〜1000キロで近づき、重さ220キロ余りの爆弾を落として飛び去る。何が起こっているかは見えない」とAlbert K. Aimar大佐は説明する(同大佐は米国に拠点を置く第163偵察航空隊の司令官で、心理学の学士を持つ)。一方、UAVの『Predator』がミサイルを発射するときは、「着弾までの一部始終が見える。それは非常に鮮明で、臨場感があり、自分の身に直接響く。だからこそ、ながく頭から離れない」

「エンダーのゲーム」の当事者に、誰がなりたいだろうか?[オースン・スコット・カードのSF『エンダーのゲーム』(邦訳早川書房刊)では、6歳で異星人との戦いの司令官になるべく運命づけられたエンダーが、ゲームのつもりで現実の戦争を指揮する]

[AP記事によれば、『Predator』操縦士が見ることのできる画像は高解像度で、地上の人物の性別や、武器の種類なども判別できるという。また、攻撃の成果を観察することも求められる。

イスラエルや米国が、UAVで個人をターゲット攻撃していることについての日本語版記事はこちら。ガザ地区の武装勢力へのインタビューによると、UAVは高い上空を旋回飛行しており、ミサイルが発射されるときには音もしないという]

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080822-00000002-wvn-sci