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2008年08月22日(金) 16時48分

製粉・製パン株に明るさ、価格転嫁進展で業績に上方修正余地ロイター

 [東京 22日 ロイター] 製粉・製パン株の業績見通しに明るさが増している。小麦など原料費の上昇から厳しい状況に置かれていたものの、製品価格の値上げが浸透したことによって、今期は各社とも増益を確保する見通しだ。これまでの業績の進ちょく率から、上方修正余地が大きいとの声も出ている。
 新光総合研究所がまとめた2009年3月期第1四半期(4─6月)決算集計(東証1部)によると、調査対象企業1196社(データ取得可能な金融を除く東証1部上場企業)の09年3月期業績見通しは、経常利益増減率が8.5%減となり、欧米や国内景気の低迷による需要減少、原料高や円高などコストアップに苦しむ企業の姿が浮き彫りとなった。
 こうした中、製粉・製パン株の業績好調が目立っている。大手製粉メーカーの第1四半期の連結営業利益は、昭和産業<2004.T>が前年同期比72%増となったほか、日本製粉<2001.T>が同45%増、日清製粉グループ本社<2002.T>が同27%増といずれも高い伸びを示した。12月期決算である製パンメーカーの中間期の営業利益は、山崎製パン<2212.T>が前年比32%増、第一屋製パン<2215.T>は赤字幅を縮小させている。
 通期営業利益予想に対する第1四半期までの進ちょく率は、日本製粉が33.9%、日清製粉が27.7%、昭和産業が46.6%。山崎製パンは中間期時点で61.0%と順調に推移しており「進ちょく率の高さから、上方修正が期待できるセクター」(準大手証券情報担当者)との声が多い。
 期初の段階では、止まらない小麦など原料価格の急騰に対する不安感から、収益の見通しについて楽観できないとの見方も少なくなかった。業績を大きく左右する輸入小麦の政府売渡価格は昨年4月と10月に続き、今年4月にも30%引き上げられ「何も手を打たなければ大幅減益か赤字に追い込まれるところだった」(証券会社の食品担当アナリスト)という。これをいかに吸収するかが課題だったが、各社は値上げを実施、これが浸透して想定以上の増益ペースとなっている。
 たとえば、山崎製パンでは小麦価格の上昇によって、年間で約200億円のコスト増が見込まれていた。しかし、昨年12月と今年5月に相次いで値上げを実施。数量ベースで食パンは前年比1%台の落ち込み、菓子パンは逆に若干ながら増加するなど、価格転嫁に成功した形となっている。
 小麦価格は今年10月にも政府売渡価格が再度値上げが想定されているほか、小麦以外の原料で先行き価格に不透明感があるなど、完全に楽観視できないものの「さらに値上げしたとしても生活必需品であるだけに、タイムラグが生じながらも、価格転嫁が今後も浸透する可能性が高い」(準大手証券情報担当者)との声も出ていた。
 もっとも、この4社の株価はいずれも8月上旬にピークを打ち調整しており「今期の増益と上方修正期待に関して織り込んだ可能性もある。PER面でも割高感が出ており、当面は10月以降の各社の対応や足元の小麦価格の下落を見極める局面にあると言えよう。今度は原料価格下落のメリットを享受する可能性が出ていることが注目点だ」(証券会社の食品担当アナリスト)という。
 小麦相場は2月にピークを打った後に3─4割下落、その後は安値で安定している。業界関係者によると、来年の小麦が出回る来春までは落ち着くとされ、来年4月には逆に政府売渡の麦価が引き下げられる可能性が高まっている状況だ。
 そのため「10月の麦価上昇で値上げを考える必要が出てくるが、来年4月に引き下げられる可能性もあり、対応が難しく悩ましい」(山崎製パンの飯島延浩社長)といった声も出ている。
 また「米飯にシフトする動きも出ているため、パン離れを考えると、今後の値上げに関しては慎重にならざるを得ない」(第一屋製パンの今井誠執行役員経理部長)「米飯との兼ね合いで、小麦製品の需要をいかに維持するかが課題」(日清製粉・稲垣泉広報部部長)などの指摘もあり、企業サイドは今後について慎重な構えを崩していない。
 (ロイター日本語ニュース 編集 橋本浩)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080822-00000032-reu-bus_all