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2008年08月20日(水) 11時25分

不可解!熱夏に結氷し、真冬に熱い湯気を噴出す渓谷オーマイニュース

 十数年前、渡邊キルヨンさんのラジオ講座のスキットで、ミリャンのオルムゴルが紹介されていました。夏、暑ければ暑いほどたくさんの氷がつくられる谷だと。それ以来、ミリャンには何度も行きましたが、真夏に行くチャンスがありませんでした。そしていつかは行きたいと思い続けていました。

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 そんな思いを話すと、去年の秋に韓国旅行をご一緒した森常緑(ときわ)さんが話に乗ってくれました。それぞれの友人を合わせて5人、6日間の真夏の旅にでかけました。

 ミリャン市の北東部の山内面、ウルサン(蔚山)市との境界あたりに海抜1189メートルの天皇山があります。天皇山の北側中腹、海抜700メートルあたりの約9000坪の渓谷がオルムゴルです。

 鉄道の蜜陽駅に降り立ち、タクシー乗り場へ。2台に分乗するつもりだったのですが、次の客が2台目に乗ってしまい、あたふたしていると乗客整理の係員もタクシー運転手さんも、一緒に乗れといいます。綿密な計画も立てていないので、車の中で相談しながら行動できる5人同乗は大いに助かりました。

 程度の差はありますが、5人とも韓国語ができます。中でも吉山賀津子さんは、ハイレベルなハングル検定1級合格者です。運転手さんを交えた会話も弾みます。

 運転手のチェ・ウォンシクさんはオルムゴルのすぐ近くの村で生まれ育ったということです。子ども時代には氷がざくざく取れたけれど、近年は観光客も増えて、氷の量が少なくなったということでした。

 それでも「三伏」の時期には氷ができ、テレビ中継もされていました。

 「三伏」というのは7月下旬の、ちょうど日本の土用にあたる、1年で最も暑いとされているころです。

 私たちが行ったのは8月7日、少し時期がずれていました。道中、チェ・ウォンシクさんが電話で問い合わせると、「今はもう氷がほとんどない」という返事でしたが、渓谷の雰囲気だけでも知りたくて、決行しました。

 入山料を徴収する係員が、車内をチラッとのぞき込んで、敬老のフリーパスでした。5人中2人はまだ50代なのですけれど。

 猛暑でしたが、渓谷の下で車を止めると、樹木に覆われて風が爽(さわ)やかです。

 オルムゴルの矢印表示に従って渓谷に沿った道を行くと、谷には家族づれなどがそれぞれに楽しんでいます。道端の岩の前で「わ〜涼しい」という声。近づいてみると、岩のすきまから冷風が噴出しています。

 そんな道を350メートル登ると、正面に寺が見えてきます。統一新羅時代の石仏坐像(ざぞう)を安置した天皇寺です。そのうしろ一帯にごろごろした石ころが積み重なっていて、その石のすきまから、寒風が噴出しています。そんな寒風に触れた水が凍るのでしょう。そして観光地図の説明では、真冬には熱い湯気が立つと書かれています。

 結氷地まで72メートルと書かれた看板に気は惹(ひ)かれましたが、かなり険しい石ころ道です。前日の聞慶セジェで疲れ果てていたので断念しました。もう一度来るとしたら、体重をしっかり落として、7月中旬ごろに来ようと思います。

 30 代後半かと思うチェ・ウォンシクさんの子ども時代といえば20年位前、私が渡邊キルヨンさんのラジオ講座を聴いていたころすら、すでに15年前になります。そのころに比べてずいぶん観光地化した様子がうかがえます。「秘境」であれば、私などに行けそうにありませんから、俗化を嘆く資格などありません。だけど自然が織り成す、不可解な逆転温度のオルムゴルは、そのままの姿を保って欲しいものです。

 なお、習った韓国語の法則ではオルムゴルなのですが、チェ・ウォンシクさんの発音は、はっきりとオルムコルでした。コルが濁らず濃音になっています。だから現地ではオルムコルという方が通じるだろうと思います。

(記者:塩川 慶子)

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