記事登録
2008年08月13日(水) 09時00分

「観光庁」10月発足、観光は日本経済活性の切り札となるか?ダイヤモンド・オンライン

 原油高騰による航空料金の実質値上げで、今年の盆休みに海外渡航する人は昨年より約1割減少したという。折からの猛暑も加わり、近場で済まそうとする家族連れは多いようだが、これとは逆の様相を呈しているのが、日本を訪れる外国観光客の増加だ。

 とりわけ、ロシアや中国、韓国といった日本観光の新興勢力が、富裕層を中心に日本で巨額のお金を落としているという。超高級ホテルに長期間連泊したり、築地で数百万円の値が付くマグロを買い付けたり、高級リゾートでスキーに興じたり、その豪遊ぶりには目を見張るものがある。

 そんなブームに影響を与えたひとつが、小泉前首相の肝入りで2003年に始まった「ビジット・ジャパン・キャンペーン」だ。「YOKOSO! JAPAN」というスローガンの派手なポスターを目にした人は多いはずだが、国土交通省が中心になって観光立国担当を目指し、2010年までに年間1000万人の外国人訪日を目標としている。2007年度には過去最高の834万人を記録するなど、キャンペーンの効果は侮ることはできず、国土交通省の「グローバル観光戦略」が功を奏している形だ。

 そんな日本政府主導の観光誘致に、このほど新たな動きが誕生する。今年10月1日に、国土交通省の外局として「観光庁」が発足するのだ。国際観光を振興し、観光産業の国際競争力強化を支援するものだが、観光立国を総合的・計画的に推進する機関として注目が集まる。

 8月1日に発足した福田改造内閣は、新味の感じられない無難な顔ぶれから、“福田保身内閣”、“改造ない内閣”などと揶揄されたこともあった。その中で、手堅い手腕で一定の評価を得る谷垣禎一氏が、観光庁を統括する国土交通大臣に起用されたことで、観光庁の今後にも期待がかかる。

 日本が観光立国を目指す意義は小さくない。例えば、2006年度の観光による経済効果は、国内旅行消費額が23.5兆円、生産波及効果が52.9兆円と絶大である。少子高齢化時代の経済活性化の切り札としても、観光の持つ意義は大きい。

 また観光庁には、日本人の海外・国内への旅行の促進という目的もある。2010年の日本人海外旅行者数を2000万人に(2006年度実績は約1754万人)、国内旅行消費額を30兆円に(2006年度実績は24.4兆円)などの具体的な目標を掲げるが、今後は観光庁が対外的な窓口となって国内外に発信を行う他、官民挙げての取り組みを強化していくという。

 観光庁で、日本の観光がどう変わるのか。旅行好きならずとも、その動向に注目したいところだ。

(田島 薫)

■関連記事
破綻続々の格安航空市場で戦略分かれるANAとJAL
最高級ファーストクラスに挑むJALの本気度
燃油高に喘ぐ航空会社が要求する“利用者還元”減税
空港外資規制だけではなかった、国交省が目論んだ過剰規制
福田改造内閣は「コイズミ的なるもの」からの決別宣言だ【上杉隆コラム】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080818-00000000-dol-bus_all