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2008年08月13日(水) 00時40分

野口が抱え続けた深い闇=選手押しつぶす「重荷」〔五輪・陸上〕時事通信

 あえて淡々と、つづった。野口は発表した談話で欠場に至ったけがの経緯を説明するとともに、関係者にひたすら、わびている。だが、最も気になるのは「残る2名の代表選手の土佐さん、中村さんにもさらなる期待が寄せられ、重荷になる事を心配していますが、どうか北京でのご健闘を心よりお祈りします」という末尾。「重荷」という言葉に、深い悩みがひそんでいるように思える。
 五輪の女子マラソン代表が味わう重圧は、本人たちにしか分からない。有森裕子がバルセロナで銀、アトランタでは銅。高橋尚子がシドニーで日本勢初の金メダルに輝き、野口もアテネで続いた。北京では日本勢として3連覇かつ5大会連続メダルが懸かっている。
 日本陸連のマラソン五輪代表選考は、過去に大いにもめて社会問題にもなり、今や国民的関心事だ。今回は比較的すんなり代表3人が決まったが、期待の大きさは年々増大している。その最先端にいたのが野口だった。
 雑音もたくさん耳に入っただろう。けがを公表した直後、広瀬永和コーチは「本人は(これまでの)報道に動揺している。五輪のことには、あまり触れないようにしている」。精神面の痛手が、肉体的な故障を誘引した可能性も否定できない。
 アテネの競技場で味わった、最後の周回で歓声を独り占めしたあの身震いするような感激を、もう一度だけ味わいたくて4年間、奮闘してきた。その瞬間のために、けがを乗り越え、想像を絶する距離を走り、すべてを犠牲にすることもいとわなかった。小さな体にはそぐわない大きなストライドが、北京まで伸びなかった結果は無情と言うほかない。(北京時事)

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080813-00000009-jij-spo