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2008年08月08日(金) 12時06分

2008年度版「おサイフケータイ最新事情」——(1)おサイフケータイのメリットとは?Business Media 誠

 2008年度版「FeliCaの基礎知識」として、(1)ではFeliCaがなぜ日本で導入され、普及が進んでいるのかの理由について、そして(2)ではカードタイプFeliCaについての最新事情についてまとめた。本稿では、携帯電話で利用できるFeliCa(おサイフケータイ)について、最新情報を整理していこう。

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●おサイフケータイの累計台数は1億目前

 非接触IC・FeliCaの機能を、携帯電話で利用できるようにしたのが「モバイルFeliCa ICチップ」であり※、モバイルFeliCa ICチップを内蔵した携帯電話を「おサイフケータイ」と呼ぶ※※。携帯電話のモバイルFeliCa ICチップが入っている面には、下の写真のようなロゴが入っているので、ロゴの有無でおサイフケータイかどうかを判別できる。

 おサイフケータイの第1号機は、2004年7月にNTTドコモが発売した「P506iC」だ。当初はドコモ端末のみの機能だったが、その後au(2005年8月〜)、ソフトバンクモバイル(2005年9月〜)、ディズニーモバイル(2008年3月〜)からも発売された。またウィルコムは2008年第4四半期にFeliCaチップを搭載したPHSを発売予定で、その後は全機種への標準搭載を目指すと発表している。

※モバイルFeliCa ICチップのライセンス供与と、モバイルFeliCaのプラットフォーム運営・管理はフェリカネットワークスが行っている

※※「おサイフケータイ」という登録商標はドコモが持っているものだが、通称としてau、ソフトバンクなど他キャリアでも共通で利用できることになっており、オレンジ色のロゴもほぼ同じものを利用している。各キャリアはおサイフケータイを共通の愛称としながらも、ドコモは「iモードFeliCa」、auは「EZ FeliCa」、ソフトバンクは「S! FeliCa」というサービス名称もそれぞれ持っている。

 現在、モバイルFeliCa ICチップの累計出荷数は各キャリアを合わせて約9500万個(6月末数字)。このうち契約数は約4900万台(3月末数字、いずれもフェリカネットワークス調べ)となっている。

 各キャリアともおサイフケータイの基本的な仕組みは同じだが、若干の違いもある。ユーザーにとって一番大きいのは、使いたいサービスに、自分の使っているキャリアが対応しているかどうかだろう。傾向として、新しいサービスが3キャリア一斉に始まらない場合は、まずNTTドコモから始まることが多い。

●おサイフケータイのメリットとは?

 おサイフケータイで提供されているFeliCaを使ったサービスの多くは、カードでも利用できる。カードタイプFeliCaに対して、おサイフケータイのメリットとは何なのだろうか?

 筆者が考えるおサイフケータイのメリットは次の通りだ。

1. ユーザーが機能を追加できる
2. 液晶画面と通信機能により、より多くの機能を利用できる
3. 本人認証が容易
4. よりセキュアに利用できる
5. クーポンやチラシを“受け取る”という利用方法

 以下、具体的に見ていこう。

(1)ユーザーが欲しい機能を追加できる

 内蔵したチップやアンテナによってリーダー/ライターの電波を受信し、“かざして使う”というユーザーの基本動作は、カードも携帯も変わらない。しかし複数のサービスを利用したい場合、カードであればそのサービスの数だけ枚数を持ち歩かなくてはならないが、おサイフケータイならば携帯1つで複数のサービスを利用できる。ユーザーが専用アプリをインストールすることによって、さまざまな機能を追加できるのは、おサイフケータイならではのメリットだ。

 現在販売されているおサイフケータイには、EdyやiD、QUICPayといった各種の決済アプリがプリインストールされており※、ユーザーが各種設定を行えば利用できるようになる。プリインストールされている以外のサービスを利用したい場合は、対応するアプリを自分でダウンロードし、初期設定をすることで機能を追加できる。おサイフケータイで利用できるアプリについては、各キャリアの公式メニューから探すほか、3キャリア共通のポータルサイトである「ピットスクエア」からたどることもできる。

※プリインストールされているFeliCa対応アプリは、キャリアや、端末の発売時期によって異なる。

 また、アプリだけでなく、ポイントやマイルもまとめられるのもメリットだ。例えばEdy連動の会員証やポイントカードを複数使っている場合は、カード別に持つとEdyのチャージが複数のカードに分散してしまう。特に、ANAのマイル、楽天やベルメゾンのポイントのようにEdy決済であれば利用店舗を問わずに付くものをためている人は、カードよりもおサイフケータイ用アプリを利用したほうがメリットが大きい。

「Edyでポイント」アプリで管理でき、Edyと連携する各社のポイント

(2)液晶画面と通信機能により、より多くの機能を利用できる

 携帯電話には液晶画面があり、通信機能を利用できる。これによって、おサイフケータイでは、カード型FeliCaにはできないことが可能になる。

 例えば、モバイルSuicaでは窓口に行かなくても新幹線のチケットを購入できる「モバイルSuica特急券」といった機能を提供しているし、モバイルEdyには、他のEdyユーザーへ送金を行える「Edy to Edy」という機能がある。これらはおサイフケータイの通信機能があるからこそ可能になる使い方だ。

 このほか、電子マネーの残高や利用履歴を好きなときに確認したり、指定した銀行口座やクレジットカードからオンラインでチャージ(入金)をしたりできるというメリットもある。同じことをカードタイプのFeliCaで行おうとした場合、チャージや残高確認をするためには、チャージできる機械や場所を探す必要があるからだ。ただしこの1〜2年でFeliCa電子マネーに対応するコンビニが増えたこと、銀行口座からチャージできるATMが登場したこと、また改札を通るときに、設定しておいた額をクレジットカードから自動的にチャージする「オートチャージ」機能が広まりつつあることなどにより、「むしろカードのほうがおサイフケータイより便利」という声が一部あるのも事実だ。

(3)本人認証が容易

 その携帯電話を持っている人が、本人だと容易に認証できること——この特徴を利用した、おサイフケータイの新しい使い方も少しずつ普及しつつある。

 例えば、2007年の東京モーターショウや東京ゲームショウは、おサイフケータイを利用したオンラインチケットシステムを導入していた。利用者は、おサイフケータイでチケットの予約と決済を行い、携帯のFeliCaチップにチケット情報をダウンロードしてチケットを受け取る。当日は会場受付の専用端末におサイフケータイをかざすだけで入場できる、という仕組みだ。

 従来、チケットをオンライン購入した場合には、発券するためにチケットセンターやコンビニに行き、端末に予約番号や暗証番号など、いくつもの数字を入れてチケットを事前に発券する方法が一般的だった。しかしアプリとFeliCaチップが連携することにより、面倒な番号入力をしなくても、携帯を“かざすだけ”でそれが本人だと分かり、チケットとして利用できる。このような本人認証のためのオペレーションが非常に楽になる。

(4)よりセキュアに利用できる

 携帯電話を落としたりなくしたりした場合は、キャリアのオペレータに電話をかけたり、端末の遠隔ロック機能を利用したりすることにより、(FeliCaを含めた)携帯電話の機能にロックをかけ、第三者に使えないようにできる。FeliCaチップそのものにロックをかけ、無記名のSuicaカードやEdyカードでは落としてしまったら泣き寝入り、という可能性が高いが、携帯電話なら自分で不正使用を防止できる。

 また、FeliCaチップそのものにロックをかけておき、暗証番号や指紋などでロックを解除しないとFeliCa関連機能を利用できないように設定することができる機種もある。こういった機能を利用することにより、よりセキュアに使えるのは、おサイフケータイならではのメリットといえるだろう。

(5)クーポンやチラシを“受け取る”という利用方法

 カードタイプFeliCaにはない、おサイフケータイならではの機能として、電子クーポンや電子チラシ、店舗情報といった情報を、端末におサイフケータイをかざすだけで受け取れるという使い方がある。これはモバイルFeliCaの「三者間通信」機能を利用したものだ※。

※三者間通信とは、リーダー/ライターからデータをFeliCaチップに送り、そこから携帯に働きかける(アプリを起動するなど)機能。三者とは、FeliCaチップ、携帯端末、リーダー/ライターを指す。

 3キャリア共通で利用できる電子クーポンとしては、ぐるなびの「ぐるなびタッチ」を導入する飲食店が増えつつある。このほか、キャリア別のクーポン・チケット機能としては、ドコモでは「トルカ」、auでは「auケータイクーポン」と呼ばれるものが代表例で、なお、ソフトバンクも同様のサービスを提供する意向を明らかにしているが、ドコモやauのような、はっきりしたサービス名称は告知されていない。

 クーポンが携帯に書き込まれるだけでは、従来の「画面を見せる」クーポンと大差がないが、FeliCa決済と組み合わせたり、会員証機能と組み合わせることによって、新しい使い方が可能になる。例えば日本マクドナルドがNTTドコモと進めているおサイフケータイ用クーポン「かざすクーポン」では、お客の来店頻度に応じてクーポンの割引率が変わるといったサービスを行っている。

 以上、カードにはできない、おサイフケータイならではの使い方についてまとめた。次回は、新しいモバイルFeliCaチップの特性と、おサイフケータイの問題点について考える。

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