記事登録
2008年08月07日(木) 18時21分

命を救う「介護用ベッド」で、死傷者続発!オーマイニュース

 最近、よく耳にすることがある。それは、主に病院や福祉施設などでは絶対に欠かせない「介護用ベッド」による死傷事故が多発しているということだ。

 先月の、経済産業省の発表によると、昨年5月以降、全国9都府県で16件の死傷事故が起きている。そのうち9人が死亡、7人が重軽傷である。原因は介護ベッドのサイドレール(柵、手すり)によるものが15件で、1件は電動ベッドからの出火と思われる火災であった。同省や事業者団体は介護用ベッドに関し、日本工業規格(JIS)は年度内に基準を改正する方針を決めた。

 また、介護機器販売者およびレンタル業者、販売者や利用者、医療施設や福祉施設の職員にも介護用ベッドの危険性を強く呼びかけることを決めた。

 一般的には病院や福祉施設などでよく目にするが、私のように自宅療養している障害者、要介護を必要とするお年寄りにとっては、自宅においても必要不可欠なものだ。

 私は、今の障害を持つ身体になって24年になる。私自身もこの24年間の間介護ベッドのお世話になってきたが、その間、「ヒヤッ」とした経験が何度かあった。私が経験した危険なことは、ギャッジアップ(ベッドの背を電動により上げること)の時だった。

 私の身体は、肩から下の運動の麻痺(まひ)と感覚の麻痺があるため、自分の意思で動かせるのは、首から上と右の肩と肘(ひじ)だけである。運動の麻痺もそうだが感覚の麻痺が怖い。なぜならば、自分の手や足がどこにあり、どのような状態なのかを自分の目で確認しなければ分からないからだ。

 ある時、こんなことがあった。私の左手が左のサイドレールのすき間に入っており、介護者も私もそれに気付かない状態で、介護者が背を上げるためのボタンを押したのだ。背はゆっくりと上がり30度くらい上がった時に私は気付き、「待った、折れる」と、大声で怒鳴ってしまった。介護者はリモコンから手を離し、背もたれは止まり、危機一髪で助かった。

 もし、この時、私か介護者の方が気が付かずベッドの背を上げていたら最悪の場合、私の手首か前腕部は骨折していたと思う。

 したがって、上に記したような事故に遭う人は、主に、私のような四肢麻痺の人、意識不明か意識障害のある人、目、耳、言語に障害を持つ人となる。

ここで事故の事例とその対策例をいくつか挙げたい。

 最も多いものは、上にも記したように私も何度か経験した、柵によるもの。腕部、脚部が柵に挟まっていれば骨折もある、また頭部、頚部(けいぶ)が挟まれれば最悪の場合、死に至ることになってしまう。

 その予防策の1つは、家具調の介護用ベッドにすること。柵は格子でなく合板の木目調のものになる。しかし、それは高価で福祉の補助金だけでは買えず、介護者が寝ている人の様子も窺いにくい。また、寝ている人が周りが見えず強い閉塞感を抱いてしまうというリスクがある。

 もう1つの予防策は、柵の格子に余分な負荷がかかるとベッドの背もたれが自動的に止まるようなものにすること。しかし、これは簡単に手を出せる価格ではない。

 また、浴衣などを着ている人が、裾(すそ)などをどこかに引っかけたまま、背を上げると事故が起きることもある。

 このケースの予防策は、浴衣ではなく、パジャマにするとよいわけだが、パジャマは着替えの際に介護者の負担を大きくするというリスクがある。

 そのほかにもまた、ベッドの柵がしっかりと設置されておらず、柵につかまり、立とうとした際に転倒し、事故につながるというものもある。このようなことは、介護者が日々注意していれば未然に防げる。

 ここに挙げた事例は、氷山の一角である。障害を持った人は、それぞれ皆違う特性を持っている。したがって、便利だからと言って最新の介護ベッドを過信せず、介護者も被介護者も機械に頼らず、自らの目、耳、口、感覚を使える人は使うことが大事だ。自らの身体は自ら管理し、自ら守っていくべきだと思う。

 介護用ベッドとは、今さら言うまでもなく人の怪我(けが)や病を治し、障害を持った人にとっては、その後の生活を快適に送り、介護者にとっては介護の負担を軽減するものである。そのベッドが人を傷つけ、人の命を奪うと言うことは非常に嘆かわしく、耐え難い。

 そして、最後に私個人の想(おも)いとして、介護者と被介護者は常に良好なコミュニケーションをとることが理想だと思う。

(記者:青柳 茂雄)

【関連記事】
青柳 茂雄さんの他の記事を読む
【関連キーワード】
介護

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080807-00000011-omn-soci