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2008年08月03日(日) 02時30分

<神戸・増水>こころちゃん守った叔母 抱いたまま濁流に毎日新聞

 5人が死亡した神戸市灘区の都賀川(とががわ)・増水事故から4日で1週間。目撃証言などから、犠牲になった同区の妻鹿愛美(つましかまなみ)さん(29)は、障害のある体で、めいの保育園児、友地こころちゃん(5)を抱きかかえたまま濁流に流されたとみられている。保育園の送迎を欠かさず、母と子のようだった2人。こころちゃんの7歳の姉は、大好きだった叔母に大きな文字で手紙を書いた。「ここちゃんをこれからもまもってあげてね」。

 31日の葬儀。遺族に参列者が教えてくれた。「愛美さんが、こころちゃんを抱いて、流されながら、必死に何かにつかまっているのを見た」。証言を裏付けるように、流されてできたとみられる傷は、2人の顔や胸にはなかった。遺族は「やっぱり一緒にいてくれたんだ」と確信した。

 愛美さんは、こころちゃんの父陽一さん(38)、母奈緒美さん(31)、姉うららちゃん(7)、祖母の妻鹿美也子さん(56)と同居。愛美さんは、奈緒美さんの妹で、仕事で忙しい看護師の美也子さん、会社員の姉夫妻の代わりに、毎日、保育園へこころちゃんを送り迎えした。

 「私より母親らしかった」と奈緒美さん。「靴はそろえて下駄箱に」。こころちゃんに保育園で言い聞かせる愛美さんの姿を多くの保護者が覚えている。「一人でも生きていけるように」。美也子さんは、障害のある愛美さんの将来を思い、厳しく育てたという。

 一家は2年前、同じ区内から引っ越してきた。前日の夕方も、親子4人で都賀川で水遊びをした。事故当日、こころちゃんは保育園の後、いったん自宅に帰ってから塾に向かう予定だった。しかし、午後2時半ごろ、2人は園を出たものの、都賀川を挟んで対岸にある自宅には、帰って来なかった。2人が、いつ、どこで濁流に飲まれたのか分からない。愛美さんは2人だけで都賀川の河川敷を歩かないようにしていたという。

 こころちゃんは、果物が大好きで、4日には家族で桃狩りに行く予定だった。最近、一人で朝、起きられるようになり、つめをかむ癖が治れば、アニメのアンパンマンの映画を見に行く約束を両親としていた。

 うららちゃんは葬儀後、自宅の2人の遺影に、こんな手紙を供えた。

 「ここちゃん(こころちゃん) まあちゃん(愛美さん) だいすきだよ まあちゃん ここちゃんをこれからもまもってあげてね」【竹内良和、写真も】

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