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2008年08月02日(土) 00時00分

(中)「プロフ、出会い系と同じ」読売新聞

一律閲覧制限 解除へ

携帯電話の有害サイトに目を光らせるフィルタリング会社のデジタルアーツ(東京都内で)=加藤祐治撮影

 東京・赤坂にある高層ビルの一室。フィルタリング会社「デジタルアーツ」のオフィスでは、若いスタッフが終日、携帯電話の小さな画面を凝視しながら、休みなく親指を動かしている。

 小学生にしか見えない幼い体つきの裸と携帯番号。排せつ物やおびただしい血、死体の写真——。携帯の画面に次々と現れるサイトをチェックして、「性行為・性風俗」や「グロテスク」「犯罪・武器」など67のカテゴリーに分類し、携帯電話会社に情報提供するのが仕事だ。

 こうしたサイトを見続けるスタッフの心理的負担は大きく、10人がかりでも1日約4000サイトの分類がやっと。だが、サイトは毎日無数に新設されていき、作業に終わりはない。「特に大変なのはプロフや掲示板などの交流サイト」と言うのは岩崎義弘Webデータマネジメント課長だ。

 ある掲示板で見つかった「WU吉」「JK」の書き込み。それぞれ「ダブルの福沢諭吉→2万円」「女子高生」の意味で、「女子高生が買春相手募集」とも読める。岩崎課長は「普通の掲示板のように見えても、書き込み内容を読み込んでみると、中身は『出会い系』と同じ場合もある」と、まゆをひそめる。


 警察庁によると昨年7〜9月、携帯やパソコン上のサイトがきっかけで18歳未満が被害にあった性犯罪事件は330件。このうち、かつて児童買春の温床とされた出会い系サイトが原因の事件は206件で、124件は子供が自由に利用できるプロフや掲示板などの交流サイトだった。

 「プロフは出会い系と同じ」と言うのは、かつてプロフに顔写真や実名、学校名を掲載し、多い日で100件以上のメッセージをやり取りしていたという都内の高校1年の女子生徒(15)だ。「友達検索」の欄をクリックすれば、性別から年齢、住所地、学校まで、望み通りの相手を探せる。サイトで知り合った恋人は、モバイル彼氏を略して「モバカレ」と呼ぶ。

 全国webカウンセリング協議会の安川雅史理事長は「今や、法規制された出会い系サイトより、具体的な個人情報が多いプロフで子供たちが狙われている」と指摘する。

 現在はフィルタリングさえかければ、交流サイトは一律、閲覧させないようにできるが、近くその原則は崩れることになりそうだ。

 サイト運営会社などで作る「モバイルコンテンツ審査・運用監視機構」が先月から、サイトの「健全性」の審査を始め、認定サイトをフィルタリング対象外とする取り組みが始まったためだ。22項目にわたる審査は、サイト運営会社自身の管理体制の充実度を測るものが中心で、大手の交流サイトの大半は「健全」のお墨付きを得られると、業界ではみている。

 しかし、審査で「健全」判定が確実視される大手の交流サイトでも、子供を巻き込む事件は後を絶たない。ネット問題に詳しい小倉秀夫弁護士は「業界は、フィルタリングの網を外して、利用者を増やすことばかり考えているようにみえる。まずは子供の安全のために何ができるか、考えるべきではないか」と指摘する。

フィルタリング 携帯電話会社が定めた特定分野のサイトについて、自動的に閲覧を制限する仕組み。総務相が昨年12月、業界に対し導入促進を要請したため、現在では各社が未成年の新規契約者に設定を勧めている。設定は利用者本人が端末の操作だけでできるが、解除は携帯電話会社以外ではできない。

http://www.yomiuri.co.jp/national/oya/oya080802.htm