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2008年08月02日(土) 11時27分

ストーカー判事のメール全容 “50男の未練”産経新聞

 現役裁判官がストーカーに変貌した理由は「嫉妬」だった−。ストーカー規制法違反の罪に問われ、7月25日に初公判が行われた宇都宮地裁判事、下山芳晴被告(55)。法廷では“ストーカーメール”16通の詳細が明らかにされ、「匿名メールで女性を不安がらせ、一方で相談に乗る」という不可解な行動の動機が被告自身の口から語られた。自作自演の“マッチポンプ男”に落ちた司法エリート。女性が別の男性と交際しているのを知り、生々しい嫉妬と焦りに狂った悲しき50男の性(さが)が、行動を制御不能にしていた。
 ■ここまで酷かった“わいせつストーカーメール”
 起訴状によると、下山被告は、2月19日ごろからの約1カ月間、部下だった20代の裁判所職員の女性の携帯電話に匿名でメールを16回送った。
 メールの内容は県警の発表などである程度判明していたが、公判冒頭の文面読み上げにより、わいせつな内容を含む、一層悪質なものだったことが判明した。
 それを再現すると…。
 「こんばんわ!今何してる?(中略)穴ちっちゃいって悩んでるって? とっても気持ちいいよ! 今度いつ会えるかなぁ…」(1通目のメール)
 「もうお風呂入った? 今日のお昼は楽しかったよね。でも、昼は短いよね〜 やる時間ないもんねっ!」(4通目)
 「もうお風呂入った? 今日のお昼は忙しくって出られなくって残念だったよね。昨日は、時間なくってエッチまでできなかったけど、いろいろやれて楽しかったよ!(中略)こんなスリルを楽しめる女の子って初めてだよ! 楽しく遊ぶのにお互い最高だよね でも、お昼にあんまり独占すると、男が怒っちゃうかなあ…じゃあ オヤスミー」(5通目)
 「この前車に乗っけてもらったときは、散髪したてだったから、髪の毛が落ちてたかもしれないね。ほかの男に見つからないよーに掃除しておいてくれたよね! なに聞かれてもトボケテおいたらバカな男にはわかんないからね。今度ラブホめぐりしようね」(6通目)
 「これから相手する男の子のために○○ちゃん(被害者)の弱いところの解説書を作っちゃったりして…左の太股とか肩口とか…」(11通目)
 下山被告はこれらのメールを匿名で送信。受け取った女性は、4月に下山被告が犯行を告白するまで誰の仕業か分からず、下山被告にメールの相談をしていたのだという。
 つまり、女性とのデートや肉体関係を示唆しているような内容も含め、メールの内容は下山被告の「妄想の世界」だったとみられるのだ。
 相談を受けた下山被告は、「許せないな。君に怖い思いをさせるなんてとんでもないやつだな」などと答えていたという。ことの真相を知った女性が受けた不信感はさぞかし大きかったことだろう。
 それにしても、下山被告はなぜこんなことをしたのだろうか?
 理由は、その後の審理で明らかになっていく。
 ■「男にメールで嫉妬させ、別れさせたかった」
 「当時の自分の気持ちを振り返ると、被害者の方に対して恋愛感情を持っていたのは間違いないと…」
 下山被告は被告人質問で、かつて被害者の女性と交際しており、犯行当時にも恋愛感情があったと述べた。その「恋愛感情」こそが、不可解な犯行の動機に直結していたのだった。核心部分を「法廷ライブ」から抜粋すると…

 下山被告「親にも、恋人にも言えないことを(女性から)相談される中で、新たな交際相手のことを聞きました。それは、あまり信頼のおける相手ではないと聞きました」
 弁護人「どう思いましたか」
 下山被告「それまで聞かされていた内容が内容だったので、『本当にそれでいいのだろうか』という気持ちがありました。他の男性ならばよいのですが…」
 弁護人「被害女性の交際相手に、嫉妬心を抱いたのではありませんか」
 下山被告「そういう面もあったと思います」
 弁護人「被害女性が新しい交際相手と近づき、一方であなたから離れていくという焦りもあったのではないですか」
 下山被告「今年3月で(自分が)転勤することが分かっており、これまでのようには(交流)できないと。そうなる前に、交際を始めた当時の、ある意味の良好な関係になれれば、と」
 弁護人「なぜストーカーメールをしたのですか」
 下山被告「自分自身の自己満足。自分が被害者に対して、何かできるという思い上がった考えがあった。…そういう気持ちで、最後の一線を越えてしまいました…」

 さらに端的に犯行動機を語っていたのが、検察官が法廷で読み上げた下山被告の供述調書だ。
 《交際相手が、彼女がメールの送り主と交際していると思い、嫉妬し、別れることを期待した》
 下山被告は検事にそう説明していたのである。
 好きな女性へおぞましいわいせつメールを匿名で送り付ける一方で、女性の交際相手がメールを見て嫉妬することを期待しながら、自分は「頼もしい男」として相談に乗る−という自作自演。
 そもそも事件の捜査が始まったのも、「女性から匿名のメールや無言電話などの被害相談を受けた」とし、3月に知人の警察幹部に自ら捜査を依頼したのが契機だった。
 構図は一見複雑だが、事件の動機を一言でまとめれば、「好きな女性の気をつなぎ止めるため」という一言に尽きるようだ。
 ■生き恥、失職…大き過ぎる代償
 一方で、公判では女性が下山被告側の6回の示談の打診に応じていないことが明かされ、女性側の怒り、被害感情の強さが浮き彫りになっている。当然のことながら、下山被告の身勝手な「男心」は、全く同情を得られなかったのだ。
 下山被告が起訴事実を全面的に認めたことから、公判では目立った争点はなく、初公判では検察側が懲役6月を求刑し、約2時間で結審した。
 一般には量刑の「相場」は分かりづらいが、ストーカー規制法に基づく警告を経ないで摘発された事例としては、懲役6月は最も重い量刑となる。検察官が読み上げた論告には、司法関係者の犯罪に対する世間の見方の厳しさを指摘したくだりもあった。
 下山被告は閉廷後、報道陣にもみくちゃにされながらも無言を貫き、弁護人が用意した車で去っていった。地裁には妻とみられる女性の姿もあった。衆人環視のもとで“裏の顔”を暴かれ、生き恥をさらした下山被告は、判事の地位を失うのも間違いない。代償はあまりにも大きかった。
 判決公判は8月8日午前10時に開廷する。

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