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2008年08月01日(金) 19時05分

八幡製鉄所火災が軟調海運株を直撃J-CASTニュース

 新日本製鐵・八幡製鉄所の火災から丸3日が経った2008年8月1日、東京株式市場では川崎汽船株が終値で、前日比31円安の833円と、7月29日から3日連続で下げた。海運大手はコンテナ船の北米航路の荷動きが低迷。これに欧州航路もピークアウトしつつあって、さらなる悪化が避けられない見通しだ。それに八幡製鉄所の火災が追い討ちをかけたという。

■鉄鉱石船の運賃市況も下落

 海運株に、火災によるマイナス影響がささやかれている。海運大手は08年4−6月期決算の発表を終えたばかり。原油高騰の影響や、コンテナ船の北米航路の不振が欧州へと広がっていること、さらにケープサイズといわれる鉄鉱石船の運賃市況の下落などで、収益に対する「失速感」が急速に強まっている。

 日本郵船、商船三井、川崎汽船の3社は09年3月期の見通し(連結ベース)で売上高を上方修正したものの、経常利益で上方修正したのは商船三井だけ。このところの株価も軟調で、なかでもコンテナ船を主力とする川崎汽船は苦しいようだ。

 8月1日の川崎汽船株の終値は833円で、8月29日からの3日続落。3月18日につけた年初来最安値848円をも割り込んで、岡三証券アナリストの宮本好久氏は「700円近辺まで下げ止まらない」とみている。

 日本郵船も前日比13円安の915円。商船三井も49円安の1361円だった。

 悪いことは重なるもので、八幡製鉄所の火災が海運大手をさらに苦しめるという。「いまの海運にとって、工場のわずかな稼働停止も、きついダメージになる」(アナリストの宮本氏)。

 燃料油の高騰分を吸収できなくなっているうえ「モノ」が動かなくなって、それでなくても船舶が余剰ぎみ。工場が稼働停止になれば、原料の輸入も製品の輸出も止まるので、船舶余剰となって海運業の収益も悪化する。宮本氏は、「工場が稼働開始しても、輸送数量の機会損失は取り戻しきれない」とみている。

■20時間の高炉停止が、海運株を左右?

 新日本製鐵によると、粗鋼生産は全体で年間約3300万トン(単体ベース、07年度)。このうち八幡製鉄所の粗鋼生産は約400万トンで、約12%にあたるという。今回の火災について同社は、生産・出荷への影響や損害については現在精査中としながら、「すでに工場は稼働している。高炉が停止したのは20時間。生産量を1日分として1万トンほど。できるかぎり影響を抑えたし、すぐに挽回できる」と、生産停止の影響が軽微であることを強調。「海運大手の株価を左右するほどの影響はないのではないか」と首を傾げている。

 火災は鎮火したが、さまざまなところで影響はまだくすぶっている。


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