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2008年07月31日(木) 21時52分

<消費者被害防止法案>命令違反に罰則 最高1億円毎日新聞

 政府は31日、食品・製品で消費者被害を引き起こした企業が国の被害防止命令に従わない場合、1億円以下の罰金刑を科す方向で検討に入った。09年度の消費者庁設置に向け、臨時国会に提出する消費者被害防止法案に盛り込む。高額の罰金を設けることで被害発生の抑止を図る。ただ、関係省庁からは「産業振興を萎縮(いしゅく)させる」との批判が出ることも予想される。

 同法案は、窒息事故を起こした「こんにゃくゼリー」など、既存の法律では規制対象になっていない商品や販売・サービスについて、幅広く消費者被害を防止するのが目的。政府の消費者行政推進会議(座長・佐々木毅学習院大教授)が6月の最終報告で新法の必要性を打ち出していた。

 これまでガス器具の事故は経済産業省、食中毒なら厚生労働省などと、分野ごとに所管省庁と規制法令が分かれ、対応の迅速性に問題があった。また、既存法ではカバーできない事態が発生した場合に十分な対応が取られないこともあった。

 消費者庁はこれら被害情報を一元的に収集し、分析。所管省庁に対応を勧告し、消費者庁も消費者被害防止法で「重大消費者事故の発生及び拡大の防止を図るために必要な措置」を事業者に命令することができ、対応の迅速化が図られる。

 新法案は、JAS(日本農林規格)法など既存の消費者関連法の罰則規定を参考に、量刑範囲や罰金額の上限を設定した。回収や使用停止などの命令に違反した場合は、企業への罰金のほか、個人事業者にも「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」を科す方向だ。また、現在は各地方自治体が条例で設置している消費生活センターについて、同法案で法的機関に格上げする。

 消費者庁関連法案は、同法案のほか、「消費者政策委員会」設置などを定める消費者庁設置法案▽消費者行政担当相の常設を明記する内閣府設置法改正案▽既存の29法令を消費者庁に移す整備法案−−の計4法案。いずれも9月上旬の閣議決定を目指している。【木下訓明】

 ◇ことば 消費者庁

 福田康夫首相は1月の施政方針演説で、食品偽装問題の多発を受け、消費者行政を一元化する新組織の設立を打ち出した。当初は消費者関連の基本政策を企画・立案する内閣府国民生活局を独立させ、公正取引委員会のような行政委員会に改編する案が有力だったが、「消費者重視」を掲げる首相の意向で、厚生労働、農水、経済産業省などの権限を移管する消費者庁とすることが決まった。政府は関連4法案を9月に閣議決定して臨時国会に提出し、09年度の発足を目指している。

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