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2008年07月31日(木) 09時43分

上海当局が民主活動家を重点監視…五輪の治安維持名目でスポーツ報知

 中国の上海市公安局が北京五輪開催期間中の治安維持の名目で、民主活動家らを重点監視対象に指定し、禁止事項として〈1〉海外メディアへの政治的発言〈2〉無許可の国内移動—などを挙げた「重点監視人員告知書」を活動家らに渡して厳しく行動を制限していることが31日分かった。

 共同通信が香港の人権団体から入手した告知書の写しは、法的根拠を示さないまま、違反した場合は刑事責任追及もあり得るとしており、中国当局が、五輪に合わせた政府批判を警戒し、圧力を強めている実態があらためて明らかになった。

 上海市公安局が今年3月に同市の民主活動家に渡した告知書は「五輪の順調な開催を確保するため」と目的を明記した上で、今年4月から10月末までの間、海外メディアに対し「いかなる政治的言論も発表してはならない」としたほか、許可を得ずに無断で上海市を離れることを禁止。1週間に1回、派出所に自身の活動状況を報告するよう義務付け、違反した場合は情状の軽重に応じて、「警告」「治安拘置」または「刑事責任追及」の処分をするとしている。

 人権問題に詳しい北京の弁護士は告知書の内容について「法的根拠が不明で、当局による明らかな人権侵害だ」と指摘。この活動家も違法な措置として行政訴訟を起こすことも考えたが、訴訟によりかえって当局から不当な扱いを受けることを恐れ断念。現在は通知書に従っているという。

 この活動家は1990年代末に中国初の野党「中国民主党」の結成を目指したメンバーの1人だった。国家政権転覆罪に問われて懲役5年の判決を受け投獄されたこともあるが、近年は目立った活動をしていない。

 香港の人権団体、中国人権民主化運動ニュースセンターは「五輪に合わせた活動家らの行動制限は全国共通の政策で、陳情者や地下教会のメンバーを含め全国で約100万人が行動制限を受けている」という。(共同)

http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20080731-OHT1T00116.htm