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2008年07月29日(火) 10時46分

【お笑い】『27時間テレビ』さんま VS 紳助に見る“同期”の信頼と絆ツカサネット新聞

先日放送されたフジテレビ『FNS27時間テレビ!! みんな笑顔のひょうきん夢列島!!』(以下『27時間テレビ』)は、メインパーソナリティーの明石家さんまのお笑い芸人としての底力を見せ付けるような形で幕を下ろした。

タイトルに「ひょうきん」とあるように、かつての人気番組『オレたちひょうきん族』の三宅恵介プロデューサーが総合演出を務め、『27時間テレビ』に登場するのは12年ぶりというビートたけしをはじめ、さんまと様々な番組で共演してきた芸人たちが勢ぞろいしたが、とりわけ印象に残ったのは、『クイズ!ヘキサゴン2』のコーナーに登場した、盟友・島田紳助との丁々発止のやりとりである。

ご存知のとおり、明石家さんまと島田紳助は同じ年齢であり、また吉本興業にそれぞれ18歳で入った正真正銘の同期である(他にオール巨人、桂小枝など)。ただ同期である、という以上に濃密なふたりの関係性は、いままでにもしばしば言及されてきたが、今回の『27時間テレビ』ではそれが炸裂したと言っていい。同期ならではの共通の記憶と経験、そしてふたりが培ってきた信頼とお笑いに関する技術、この4つのポイントが重なり合って爆発した、猛回転するアドリブ芸は、お笑いには運動神経、反射神経が重要だと言われているにも関わらず、それぞれ52歳になった今でさえ、他の芸人の追随を許さない凄みを感じさせるものだった。


まずはコーナースタート後、
「杉本の金儲けの協力だろ?」
「どうせ莫大な金もらうんだろ?」

と悪態をついていた紳助は、往年のキャラ、パーデンネンの格好で意気揚々とスタジオに乗り込んできたさんまに対し、

「久しぶりに再会したお前がこんな姿で俺は悲しい」
「お前、25年前(『ひょうきん族』の頃)と何にも変われへんやん」
「52歳でこれはキツいわ」

と矢継ぎ早に言葉を浴びせていく。

ゲームのひとつ、「仲間を救え! 底抜けドボンクイズ!」で自ら水に落ちる役を買って出るさんまは、紳介にも同じく水に落ちるよう強く言うが、紳助は断固としてそれを拒否。ここから(水に)「ハマる」「ハマらない」をめぐり、ゲームそっちのけでふたりのバトルが始まるのだ。

さんま 「お前、『ひょうきん』の頃はずっとハマッてきたやんけ!」
紳助  「あの頃はそうだったけど……今はちゃうんや。」
さんま 「お前、あの頃のお前じゃないのか!」
紳助  「俺、もうそんなふざけた格好ようせんし。昔、18から一緒だったけど、生き方が変わったんや。」
さんま 「嘘! 18の頃から一緒やったけどなぁ。恋人とふたりになったとき、俺を公園に寝かしたあの日を覚えてるやろ?」
紳助  「……覚えてるよ(うろたえる)。」
さんま 「俺が泊まってるのわかってて、お前は今の奥さんとイチャイチャしはじめてなぁ。「そんなことするんやったら俺は公園で寝る!」って言ったらお前、「待て、さんま!」って言うて……毛布渡したよな(笑)。」
紳助  (黙ってうなずく)
さんま 「俺が朝まで公園で寝た日のこと、覚えてるやろ?」
紳助  「いやいや、1時間ぐらいで帰ってくると思ったら朝まで帰って来ないから、迎えに行かないかんなぁ、と思いながら俺も爆睡してしもうたんや。朝10時頃に行ったら、お前、公園でホームレスみたいにして寝とったがな(笑)。」

脱線しつつも、すぐに話を軌道修正するふたり(軌道修正した先は水に「ハマる」「ハマらない」というくだらない議論なのだが)。なにせ生放送なので時間がない。それでもさんまは執拗に食い下がる。

紳助  「あんな頃もあったけど、人は生き方が変わんねや!」
さんま 「変わらへん! あの頃を思い出せ! ふたりでスーパーの屋上で司会したとき、仮面ライダーショーの後で「ズワイガニ」って紹介せなならんのに、「怪人がやってきます!」「ズワイガーがやってきます!」ってやって後で店長に怒られた日もあったやろ!」
紳助  「奈良の大和高田のスーパーや(笑)。ギャラ、ふたりで5000円や。1日2ステージなのに。」
さんま 「そうや! 「御陣乗太鼓」ってのが(頭に)浮かばなくってな! 「お願いしましょう、五人囃子です!」って言ってエラい怒られた日があったな!」
紳助  (カンペを見ながら時計を指差し)「もう次に行かなあかんけど、なら俺もひとつだけ、昔の話で腹の立つこと言うてええか?」
さんま 「言うてもええよ。」
紳助  「お前、覚えてるか? 俺がハタチでお前もハタチや。」
さんま 「俺もハタチや。」
紳助  「仕事もなかった頃や。」
さんま 「なかったなかった。」
紳助  「お前といっつも営業行くねん。笑うてんのふたり(自分たちを指差して)だけや。」
さんま 「そうや。」
紳助  「客、誰も笑わへん。京都の八瀬遊園のプールサイドで(さんま、こらえきれずに笑い出す)。な? 毎日毎日、客が笑わへんからあんまり辛なって、昼の3時のステージや、お前なんて言うた? 「ただいまから、水中縄抜けショーをご覧に入れます」(笑)。俺(紳助)が引田天功の弟子や!って手足を縛ってプールに放りよった!(ひな壇から「えー」) 俺、どうなるんかなと思ってたら、ホンマに溺れた!  監視員の兄ちゃんが3人飛び込んで、俺を助けてくれたんや。俺は意識もうろうとしたまま、水飲んで助けあげられたら、こいつプールサイドで(大きく手を叩きながら引き笑いのジェスチャー)(笑)。」
さんま 「あれは受けたなぁ!」
紳助  「受けてへん! どアホ!(笑) だからお前はやれ! 俺はやらない!」

この「水中縄抜けショー」事件はふたりの間でよくネタにされており、ウィキペディアにも記されている。

さんま 「じゃ、ほんなら全部言うぞ。ハンガーで吊られた話とか言うぞ!(笑)(苦笑いの紳助) 男同士だろ! お前、俺がどんなけ面倒見たったんや! お前が入院したとき、見舞いに行ってやったろ!(真顔で首を傾げる紳助)お前、腸を切ったとき入院したやろ!」
紳助  「……記憶にないわ(笑)。」
さんま 「何がや! じゃ、竜介を紹介したのは誰や! 竜介を紹介してお前を漫才師として成功させてやったのは誰やという話や!」
紳助  「お前が昔、若いときにヒドいことをした女の子を一晩中フォローしたのは俺やないか!」(さんま、顔を伏せて泣く。ひな壇から「負けた!」「あーあ」などの声。だが負けじと立ち上がって)
さんま 「その後、お前、手ぇ出したやないかい。」
紳助  「……っ! それは明石家さん、テレビで言っちゃイカン!(笑)」
(直立不動で睨み合う二人)
紳助  「明石家さん、明石家さん! 編集できないんだよ!」
さんま 「すべてはパァー!」(パーデンネンのポーズ)

女性関係の暴露話もさじ加減が絶妙である。この前のコーナーで、若手漫才コンビが相方の過去の女性関係を実名でバラし、スタジオを微妙な空気にしてしまったこととは好対照だ。

パーデンネンのポーズで一旦オチがつき、番組は通常の進行に戻る。紳助は司会に、さんまはゲスト席に収まった。ふたりが「ハマる」「ハマらない」で揉めはじめてからここまでで、実に4分弱。M-1グランプリの決勝戦の持ち時間とほぼ同じ時間でこれだけの情報量を喋り倒し、なおかつ笑いもとる。しかもアドリブで。ふたりが若手芸人から恐れられているのがよくわかる。ちなみに「ハンガーで吊られた話」が何なのかは最後までわからなかった。

そしていよいよ「底抜けドボンクイズ!」がスタートする。ここでもさんまは紳助を水に落とそうとする。何がそこまでさんまをかきたてるのか——。単にこのやり取りが面白いからに違いないのだが。

さんま 「紳助! 男の勝負だ! そこ行けぇ!」
紳助  (直立不動のまま斜め上を向き)「……ごめん、無理やねん。」
さんま 「ちょ、お前、本気で言うてんのか、それ!」
間寛平 (ひな壇で立ち上がり)「誰がモンキーやねん!」(ひな壇から「忙しいなぁ」の声)
さんま (紳助に向かって)「もう時間取るのイヤだから。入れ、お前入れ、な!」
紳助  「入らへん。」
さんま 「なんでやねん!」
紳助  「脊髄2箇所折れてんねん。」
さんま 「わー、大丈夫? って、嘘やろ?」(真顔で)
紳助  「嘘や(笑)。」
さんま 「お前、折れてるの心だけだろ?」
紳助  「うっさいわ! (急に攻撃的になり)お前も朝6時や7時まで寝られへんやないか!」
さんま (驚き、崩れ落ちながら)「そんなの関係ないやろ! 俺が何時に寝ようと。」
紳助  「普通の人間はもっと早く寝るわ! 朝7時頃まで起きてやがって。」
さんま 「お前、朝の5時半に電話をかけてきて! (声色を使って)「起きてんのか〜、俺、今、酔うて泣いてんねん」って、わけわからん電話かけてくるな! なんで朝5時半にわけわからんおっさんの涙(電話で)受けなあかんねん!」
紳助  「俺は留守電に(メッセージを)入れようと思ったのに、お前が5時半に(電話に)出て、びっくりしたんじゃアホ! 俺はな、酔うて、お前の声が聞きたいな、と思って、酔うた勢いでお前に電話したんや。で、留守電に熱い話を入れようとしたら、お前が起きとったんや(笑)。それでびっくりしたんじゃ。」
さんま (小馬鹿にした口調で)「「うわ、さんま! ……泣いてんねん」。なんや、あの電話! あんな報告いらんわ、50過ぎてから! アホ!」
渡辺正行 「50過ぎてからのことなんですか?(笑)」
さんま 「先々週のことや!」(ひな壇から「えー」「最低!」などの声)
上地雄輔 「紳助さん! どうしたんですか?」
紳助  「俺は熱い男やから、酒飲んでるうちにな、さんまのことを思い出すわけや。俺は幸せになったけど、あいつはド不幸な人生やな、と思ったら切なくなってきて、ちょっとあいつにメッセージしようと思ったねん。で、5時半だから留守電に入れたろと思って電話したら、(普通に)「もしもし、何?」って(笑)。酒も飲まんと男が5時半に起きとるな、と。お前、寝れへんかったら睡眠薬飲んだらどや、精神安定剤飲め、って言ったんや。そしたらこいつ、なんて言うたか知ってるか? 「お前とは違う」って(笑)。ものすごく胸が痛い……(と崩れ落ちる)。」


とりあえず書き起こしはここまで。つい2週間前にこんな電話でのやりとりがあったこと自体が驚きである。どこまでこのふたりは仲がいいんだろう……。

この後、コーナーが始まることによって、ふたりの「ハマる」「ハマらない」についてのやりとりは終息するが、紳助はさんまをプールに落とすタイミングで翻弄し、逆にさんまは最終兵器ジミー大西を駆使して番組を大混乱に陥れる。

かつて「コンビを組まないか」と紳助がさんまを誘い、それを断ったさんまが松本竜介を紹介した、と語られているが(事実、ここでもさんまが竜介を紳助に紹介したというエピソードが断片的に語られている)、このふたりの濃密な関係性は“絆”と呼んでも差し支えないだろう。コンビでもなければ、兄弟弟子でもない、このふたりが徹底的に喋り明かす番組を、10年後ぐらいにもう一度企画してほしいものだ。



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(記者:ポポちゃん)

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