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2008年07月29日(火) 21時27分

【解説】元グーグルの技術者が放つ、新検索エンジン「Cuil」の“実力”と“アキレス腱”Computerworld.jp

 よりすぐれた技術を擁して、検索サイト最大手の米国Googleを駆逐しようともくろむ新興企業は数あれど、米国Cuilほど鳴り物入りで登場した企業は少ない。創立者によれば、同社の検索サイト「Cuil」(「クール」と発音する)は、ほかの検索サイトと比べてインデックス化したデータ量が3倍に達するという。本稿では7月28日に登場したCuilの実力と、今後彼らが抱える(であろう)課題を紹介しよう。

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■Cuil設立者たちの華麗な経歴

 Googleは7月25日、Web上のユニークURL数がついに1兆を超えたと発表した。

 同発表が7月28日のCuilのサイト立ち上げを見越しての“一手”であることはまちがいないだろう。またCuilのサイトが立ち上げ当日、一時利用不能に陥ったことも、Googleにとってはだったようだ。

 そのような状況にもかかわらず、Cuilに対する注目度は高い。それはCuilを設立した人々が“特異”なバックグラウンドを持っているからである。

 同社の社長兼COOであるアンナ・パターソン(Anna Patterson)氏は、元Google検索インデックス・アーキテクトであり、GoogleのWebページ・ランキング・チームを率いていた人物だ。同氏の夫でCuilの共同設立者であるトム・コステロ(Tom Costello)氏は、スタンフォード大学および米国IBMで検索エンジン技術の研究開発に携わっていた経験があり、現在はCuilのCEOを務めている。

 Cuilによると、同社のサイトは1,200億件ものWebページをインデックス化し、Googleのリンク分析技術を凌駕するWebページ・コンテンツ分析技術に基づいて、適切な結果を表示できるという。ただし一部の先行ユーザーは、同サイトがGoogleに比肩するという見方には懐疑的なようだ。

■Cuilの検索スタイルは「時代遅れ」——専門家の辛口な評価

 検索サイトを評価するブログ「Search Engine Land」を運営しているダニー・サリバン(Danny Sullivan)氏は、Cuil設立者たちの経歴が華麗であることを認めつつ、以下のように語る。

 「彼らは検索技術を知り尽くしている。特に過酷な使用に耐えうる、業務用の検索技術についてはエキスパートだ。そればかりではなく、だれでも利用できる包括的な検索サービスも提供している」(Sullivan氏)

 しかし同氏は、「Webページへのリンク表示は、人気度ではなく内容を基準にしている」というCuilの主張は偽りであると指摘した。同氏によると、Cuilで「Harry Potter」(ハリー・ポッター)と検索したら、「Harry Potter&the Order of the Phoenix」の映画公式サイトがトップページに表示されたという。

 同氏は「ほか新興検索エンジンと比較すれば、Cuilが検索エンジン市場を獲得できるチャンスはある。ただし、Googleを脅かす存在に成長する可能性は低い」と語る。

 新興のインターネット・サービス/企業を紹介するブログ「TechCrunch」のオーナーであるマイケル・アーリントン(Michael Arrington)氏は、複数の用語を検索してみた結果、Cuilは「非常にすばらしい検索エンジン」ではあるが、Googleが表示する結果の“奥深さ”や“妥当性”は持ち合わせていないと感じたという。

 ちなみに同氏が両検索サイトに「dog」と入力したところ、Cuilが弾きだした結果件数は2億8,000万件で、Googleは4億9,800万件だったそうだ。

 「不適切なクエリを無作為に選んでいるわけではないとするならば、Googleが表示するWebページのインデックスは、Cuilのそれよりはるかに多いことは明らかだ。また、両サイトのクエリから返ってきた純粋な結果を基に判断すると、ランキングに関してもGoogleのほうがCuilに勝っている」(Arrington氏)

 とはいえ、関連カテゴリの表示においてはCuilのほうがすぐれており、きわめて適切な結果が表示されるという。

 「Googleを利用する際は、必要な結果を絞り込むため、少しずつ違った単語で検索することが当たり前だった。その点Cuilは、ユーザーが次に必要とする単語を予想し、画面右上に配置されたウィジェット内に表示してくれる。つまり、最初のクエリに基づき再検索する手間が省けるわけだ」(Arrington氏)

(Heather Havenstein/Computerworld米国版)

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