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2008年07月29日(火) 23時01分

殺人未遂 校舎に悲鳴…「みんなパニック」 愛知毎日新聞

 夏休みの中学校の校舎に悲鳴が上がった。愛知県知立市の市立知立中学校で29日起きた教諭刺傷事件。殺人未遂容疑で現行犯逮捕された18歳の卒業生の少年は教諭への「恨み」を口にしているというが、詳しい動機は不明だ。「学校でこんなことが起きるなんて」。部活動で現場に居合わせた生徒たちは声を震わせた。【石原聖、秋山信一、福島祥、安間教雄】

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 「(教諭が)刺されたと分かって、みんなパニックだった」。事件に遭遇した吹奏楽部員の3年の女子生徒(14)は、震えながらそう話した。部員たちによると、吹奏楽部は中学校敷地の南西にある技術棟2階の被服室で練習中だった。校舎の耐震工事のため、たまたま同室に練習場所が変更されていた。29日午後1時すぎ、部員約50人が神谷佳久教諭とミーティング中、暑さで開放してあった入り口にチェックの上着にシャツ姿の少年が現れた。

 「楽器の業者さんかしら?」。部員たちがそう思った直後、入り口に背を向けて椅子に座っていた神谷教諭が立ち上がった。シャツの背中が血で赤い。「キャー」と部員の泣き叫ぶ声が響いた。

 「おい、やめろ、やめろ」。大声を上げながら逃げる神谷教諭を少年は追いかけ、室内をぐるぐると駆け回った。教諭の血が床に点々と続く。逃げ遅れた部員たちは部屋の隅で寄り添った。少年の右手に光るものが見える。ナイフと知ったのは少年が逮捕された後だったという。

 被服室の外へ逃れた神谷教諭を追いかけた少年は、笑いながら部員たちに手を振ったように見えた。「みんなには危害を加えない」という意味なのか、とささやき合った。

 少年は技術棟1階と体育館をつなぐ渡り廊下で、教諭を捜してナイフを持ったままうろついているところを、騒ぎを聞いて駆けつけた野球部顧問の教諭に取り押さえられた。「何をしているんだ」。声を掛けられると座り込み、抵抗しなかったという。

 体育館の近くをランニングしていたバレー部員の2年の男子生徒は「吹奏楽部の人が来て『刺された』『先生を呼んで』と叫んでいた。『逃げろ』と先生に言われたので避難した。校内でこんな事件が起きてびっくりした。怖い」と話した。知立市教委によると、夏休みのため学校は技術棟前の西門だけが施錠されていなかったという。

 ◇怒ると怖かった

 逮捕された少年と中学1年時に同じクラスだった知立市の男性会社員(19)によると、少年は口数が少なく、いつも一人でいるタイプだったという。

 男性によると、少年は中学2年時、当時担任だった神谷教諭を殴ったことがあった。提出物を出すようにいわれてあいまいな返事をしたら、神谷教諭にしかられた。さらに「字が汚い」と神谷教諭に言われ、殴りかかったという。男性は「怒ると怖いというイメージがあった」と振り返る。

 ◇「教育熱心な先生だった」 校長会見

 事件後会見した同中学校の沓名基嗣校長によると、重傷を負った神谷教諭は同中学校が初任地で、今年8年目。担当教科は国語で、吹奏楽部の顧問兼指揮者として熱心に指導にあたっていた。少年が神谷教諭への「恨み」を動機として供述していることについては「一切思い当たる話は聞いていない」と話した。

 また吹奏楽部の女子生徒(14)は神谷教諭について「熱心な先生。1年生の時授業も受けたが、面白いことを言ってすごく楽しい授業だった。人気のある先生だったと思う」と話す。 同中学校を卒業した高校1年の男子生徒(16)は「厳しい先生だったが、まさか刺されるなんて」と驚いていた。

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