2008年07月28日(月) 11時19分
庶民にはわからない「地デジ」受信の本当の問題点（オーマイニュース）
7月24日からアナログ放送番組には「アナログ」の表示を行うようになった。もちろん「地デジ」推進に向けた「認知度アップ」が目的である。
しかし、総務省やNHKなどが「地デジ」の対策としてPRしているのは下記の2点である。
・地デジ対応TVに買い換えるか、現在のアナログ用TVにチューナーを外付けする。
・アンテナをUHF用に交換する。
しかし、こんな単純な説明で十分なのだろうか？
記者が自宅の地デジ対応のために、少しネットで調べただけでも以下7点が懸念されるが、これらの点については総務省もNHKも決して触れようとしない。
7月24日、福田首相と放送関係者の会談があったそうだが、福田首相の認識は「地デジ成功の鍵は良いコンテンツとチューナー開発」という程度らしい。
しかし問題は5000円のチューナー開発や、低所得者へのチューナー配布だけではない。
著名なタレントに『国民のご協力をお願いします』と言わせているが、「協力内容」については一切触れていない。
国民の協力を得るには必要な情報を国民に知らせる事である。次のような懸念点を国民にはっきり知らせ、国民の側にも準備を進めてもらわないと、3年後、サイマル放送が不可避となるのではないか。
◇
■1。現在使用中のUHFアンテナで地デジは受信できるか？
現在使用中のUHFアンテナが、地デジの受信チャンネルに対応していれば問題ないが、アンテナの機種によっては交換が必要である。現在UHFアンテナを使っているから大丈夫とは行かないのである。仮に現在のアンテナが使えるとしても、高さや向きの調整が必要になる可能性が高い。
■2.1本のUHFアンテナで複数局の電波を受信できるか？
地デジ放送は送信局により、水平偏波、垂直偏波と異なった電波で放送されている。受信する場合にはアンテナをその放送局の偏波に合わせる必要があり、受信する送信局の偏波に合わせたアンテナが必要である。また、1。で述べたように送信用アンテナの方向に向ける必要があるため、複数局の放送を受信するためには、複数のアンテナが必要になるだろう。
■3。異なった方向の複数のアンテナを1本の同軸ケーブルに接続できるか？
混合器を使えば可能である。しかし、混合器は使用するチャンネルにより異なり、適合している専用の混合器を選ぶ必要がある。地域に応じた混合器が発売されており全国共通ではない。
■4。どの部屋でもTVを見ることができるか？
一般の家庭では大体どの部屋にもTVを接続するためのコンセントが壁に設置されている。また、1世帯あたりのTV台数は平均2.5台である。問題は屋内配線である。アンテナを地デジ用にしても、従来の屋内配線のままでは見られないことがある。配線ケーブルに『3C-2V』と表示されているケーブルでは信号の減衰が激しく、地デジ用ケーブルとしては保証外である。
壁の中や天井裏に埋め込まれている屋内配線が『3C-2V』の場合は、最低でも『3C- FV』（できれば『5C-FV』）ケーブルに交換しないといけない。これまではどの部屋でも見ることができたのに、地デジになったら見られないかも知れない。屋内配線は外から見えない「埋め込み」のため、確認するのも困難だし、まして、ケーブルを交換するとなると、壁や天井を剥がす大工事となり時間も出費も多大となる。
■5。古い屋外配線でも使えるか？
これまでアンテナと屋内配線を繋いでいたケーブルも、経年劣化でひび割れなどが生じて水分が入り信号の劣化に繋がるので交換の必要度が高い。
■6。マンション等における受信障害はだれが対応するのか？
総務省の方針は「マンション管理組合」などに丸投げである。地デジになって受信障害が発生した場合、被害住民はどうすればよいのか？ 被害住民の数が 100世帯も超えるような大規模なら、マンション管理組合と対等に話し合えるかも知れないが、10世帯程度の小規模障害の場合、被害者はどうすれば良いのだろうか？ 障害が起こるかどうかも「その時になってみないと判らない」だろう。
■7。蛇足だが、国民にとってのメリットは何だろう？
地デジにより「高画質・高音質」になるというが、それは1インチ当たりの価格が1万円もするような高いTVの場合である。現有のアナログのブラウン管TV にチューナーを付けただけでは高画質にはならない。また、地デジの特徴である「双方向性」も、5000円のチューナーで実現できるのか？
（記者：弘中 健一）
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