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2008年07月26日(土) 10時00分

【トレンド】「男子禁断の夢を実現」!? 写真集『妄撮』が異例の大ヒット!nikkei TRENDYnet

初版1万5千冊が即売り切れ

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 6月13日に発売された写真集『妄撮(もうさつ)』(講談社)がネットを中心に人気を集めている。1万冊を超えたら大ヒットと言われている写真集業界で、発売から1カ月初版の1万5000冊が即売り切れ。店頭、ネット上でも品切れが相次ぎ、7月には2刷、3刷が出るという。

 『妄撮』は元々、同社の男性月刊誌「KING」内に連載されていた人気企画。毎回、異なるグラビアアイドル、女優、モデルたちが紙面を飾った。普通のグラビアページと違うのは、モデルたちが服を着ていること。普段着、バスケットボールの練習着、通勤服…、さまざまなシチュエーションの中でモデルたちはその場面にふさわしい服を着ている。ただときどき、その胸元やヒップラインに「ビリビリ」が走る。紙面が破り取られたようにデザインされ、その下に服の下に隠れているはずのランジェリーがのぞいているのだ。表紙の画像をご覧いただければイメージは分かるはず。

 例えば、タレントの谷桃子さんが会議でプレゼンしている1カット。下半身部分に「ビリビリ」が入り、そこからレースのついた紫色のショーツが見えるようになっている。まさに、男性の「妄想」を「撮影」した写真集なのだ。

開発コードは「ビリビリ」

 「コーナーのタイトルが決まるまでは、スタッフの間でも『あのビリビリのヤツ』と言われていました」と話すのは「KING」編集部の小林司副編集長。

 企画が始まったきっかけは、ニューヨークで活動していたカメラマン、Tommyさんの作品を人づてに紹介してもらったこと。元々ファッション関係の作品を撮ることが多かったTommyさんの作品の中に、写真を破ったように加工し、そこからモデルの素肌やランジェリーが見えているものがあった。当時、編集部では創刊号を出したばかりだったが、作品のコンセプトを気に入りすぐに2号目での特集掲載が決まったという。これが反響を呼び、3号からは連載が始まった。反響の大きさを示すように、「妄撮シリーズ、堂々スタート!」と題し、見開きで12ページの特集だった。

「3号からの連載が始まった時点で、企画のタイトルを『妄撮』とすることが決まりました。タイトルを決めたときに特に重視したことは2つ。一つは篠山紀信さんの『激写』くらいインパクトのあるタイトルにしたかったこと。もうひとつは、お洒落過ぎるタイトルにはしたくなかった。聞いてすぐにどんな写真なのか意味が分かるようなタイトルにしたいと考えました」(小林副編集長)

 小林副編集長が「お洒落すぎるタイトルにしたくなかった」と話すのには理由がある。女性のファッションモデルを表紙に使うという、男性誌では珍しい方針を打ち出していた「KING」。「妄撮」のコンセプトとしても「ファッション写真とグラビアの中間」を狙っていた。だが、ファッションに寄りすぎる写真は男性受けしないことも事実。グラビアを好む男性読者を逃さないようにするため、「妄想」を連想させる「妄撮」のタイトルをつけることとなった。

 当初はホテル内での撮影が主だったが、回を重ね構図を検討するうちに徐々に「ストーリー感」を醸し出すカットが多くなった。ビルの屋上や日本家屋、学校の図書館や都会のクラブを思わせる場面もある。狙ったのは「彼氏以外の目線」だという。「一緒にホテルに行くことができるのは恋人である男性だけ。恋人以外の男性は女性の衣服の下を想像でしか楽しむことができない。想像することがすべてだった中学生のころのマインドこそが、この企画の大前提です」(同副編集長)

これまでのグラビアにない試みを

 「妄撮」のコンセプトが決まった背景には、現在のグラビア界の「閉塞感」が背景にあったともいう。写真集の売り上げや、雑誌のグラビアコーナーの人気が一時期に比べ衰えている。

「グラビアのページがどれも変わり映えしないものになってしまっているのではないかという気持ちがあった。制作側がルーティーンをこなすようにグラビアに取り組んでいるのでは仕方ない」(同副編集長)

 『妄撮』に登場するモデルは、グラビアモデルからファッションモデル、女優までと幅広い。普段はランジェリー姿で写真に写らないグラビアモデルもいる。グラビアモデルだけではなくいろいろなジャンルのモデルを混ぜ、「できるだけ意外な人」を登場させることでも、目新しさを狙った。

「可愛い女の子というのは、本来ジャンルレスなものですから」(同副編集長)

 撮影の方法は、まず服を着ているカットを撮った後で、同じポージングで下着のカットを撮影。服を着たカットを時間をかけて撮影し、下着の撮影はできるだけ短時間で行うように配慮していたという。顔の表情は、ほぼすべて服を着ているカットのもの。水着や下着姿で撮影するときにはない自然な表情と、見えている下着のギャップを楽しめることも特徴の一つだ。

 撮影現場では撮り終えた写真をその場で合成・加工し、実際にモデルに確認してもらった。このとき、モデルたちが「すごい!」と感動し、ほぼ全員が自分でパソコン画面の「ビリビリ」を破きたがったことが印象的だったという。

何度も見て楽しめる仕掛けを

「一度見て終わりではなく、何度でも楽しめる仕掛けのある写真集にしたかった」と小林副編集長が話す通り、写真集では連載にはなかったさまざまな「オプション」が追加されている。

 男性ファッション誌のスタースタイリスト伊賀大介さんを起用しての川村ゆきえさんの“完全ファッション風”撮り下ろしのほか、連載では未掲載だったカットも多数収録。新たに収録されたのは主に、写真を加工する前の「ビリビリ」が入っていないカット。連載ではページ数が限られているために掲載できなかったが、加工後と加工前を見比べてほしいのとリズムを作るという意図だ。また、「自分で破れる妄撮シール」として、バストの部分をはがすことのできる写真シールがついてくる。詩人の御田温太郎さんによるキャッチコピーや詩も、カットに奥行きを与えている。

「ネット上では『アイコラ(※)なのでは?』という反応もあります。もちろんすべて本人たちなのですが、本当に本人なのかという『検証』も含めて、いろいろな楽しみ方をしてもらえればと思っています」(同副編集長)

 ファッション性の高さやトリックアート的な要素から、若い男性だけではなく、意外にも女性から「カッコイイ!」というような大きな反響もあった。好評を受け、今後もターゲット層を広げながら、「妄撮」シリーズは続いていく予定だという。

(文/小川たまか=プレスラボ)

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