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2008年07月26日(土) 10時00分

【トレンド】【指南役氏が緊急寄稿!】迷走するテレビドラマ “改編期外し”や“最終章”の裏にあるものnikkei TRENDYnet

 このところ、テレビドラマの改編期外しが目立つ。

【詳細画像または表】

 フジテレビの月9ドラマ『CHANGE』が5月12日スタートと、ほかのドラマから大きく遅れて始まったのは記憶に新しいが、そのあおりを受ける形で7月クールの『太陽と海の教室』も7月21日スタートと、既にほかのドラマから2〜3週遅れている。

 TBSも4月クールの『ROOKIES』を通常の1クールを超えて7月末まで放映したため、次の『恋空』は8月2日スタートである。フジテレビの土曜ドラマもこの3クールほど、微妙に改編期を外している。

 なぜ、こんなことが起きているのか?

すべては『SP』から始まった

 改編期外しの先鞭をつけたのは、フジテレビの土曜ドラマ『SP』である。

 前クールの『ライフ』はほかの7月クールのドラマと同様、9月中旬に終了したものの、間に単発ドラマを挟むなどして、『SP』がスタートしたのはほかの10月クールドラマから大きく遅れること11月3日。が、そんな半端な開始時期が功を奏したのか、初回視聴率は14.5%と高視聴率を獲得したのである。

 その後も視聴率は順調に推移。終わってみれば平均視聴率は23時台のドラマでは史上初の15%超え。さらに最終回の最後で“つづく”と見せて、4月に「スペシャルアンコール特別編」と題した2時間10分の特番を放映すると、なんと21.5%を叩き出したのである。が、その大半は単なる総集編であった。

 『SP』が成功した要因は色々と考えられる。本広克行監督のスピーディーな演出、原作者・金城一紀氏の斬新な脚本、岡田准一、真木よう子、堤真一らの迫真の演技——。だが、「これまでのドラマと何かが違う」と視聴者が感じた“非日常感”が、視聴率を押し上げたことも否めない。

 実は、そんな非日常感こそ、今のテレビの作り手たちが求めていることなのだ。

普段テレビを見ない人たちが見る番組

 テレビ番組の視聴率低下が叫ばれて久しい。この10年ほどでも、バラエティでは20%を超える番組が激減し、連ドラは15%をなかなか超えられなくなっている。

 今、テレビ番組で高視聴率を計算できるのは、いわゆるプレミアム度の高い番組だけである。年1回の特番、スポーツのビッグイベント、人気ドラマの最終回などは、テレビ離れが叫ばれる今も高視聴率を維持している。

 ちなみに、2007年の年間視聴率ランキングを見ても、TOP10にランクインしているのは、これらプレミアム番組。NHK『紅白歌合戦』や日本テレビ『24時間テレビ』といった年1回の特番、浅田真央が出場した「世界フィギュア」やボクシング「亀田×内藤戦」、「箱根駅伝」などのスポーツのビッグイベント、そして『花より男子』や『華麗なる一族』などの人気ドラマの最終回である。

 面白いのは、普段は視聴率一ケタで低迷するプロ野球中継も、北京五輪のアジア予選の「日本×台湾」戦になると27.4%と、年間11位にランクインしているのだ。

 これは何を意味しているのか。

 普段はテレビを見ない人たちも、プレミアム度の高い——非日常的な番組になると、チャンネルを合わせるということだ。

禁断の果実“非日常感”

 視聴率がとれるのは、非日常的な——プレミアム度の高い番組。

 ならば視聴率を稼ぐために、そんな“非日常感”を敢えて演出しようと考えたのが、最近のテレビの作り手たちである。そうして生まれたのが前述の「改編期外し」であり、昨今問題視されている「最終章」である。

 最終章。ドラマ『ラスト・フレンズ』が第10話で謳(うた)って視聴率を20%台に乗せたり、同様に『CHANGE』も第7話で謳い、さらに15分も延長して視聴率を20%台に戻したアレである。

 評判のドラマはかなりの確率で最終回で視聴率を押し上げる。普段、テレビを見ていない人たちも「最終回くらい……」とチャンネルを合わせるからだ。『ラスト・フレンズ』も『CHANGE』も最終回で視聴率を上げるのは容易に想像できた。ならば、その“うま味”を1度ならず2度も味わいたいと考え、とられた戦略が「最終章」である。最終回と思わせ、普段テレビを見ない人たちを引き付ける——。

 だが、それは禁断の果実でもある。度重なる最終章の放映は、確実に視聴者の信頼を損なう。視聴者は馬鹿ではない。そう何度も「狼が来た!」には騙されない。

 一時の数字欲しさに「最終章」という禁断の果実に手を出してしまうことが、長い目で見れば、そのドラマのファンを減らすことにテレビの作り手たちは気づいたほうがいい。

 『ラスト・フレンズ』は中盤まではブログなどの評判も上々で、視聴率も右肩上がり。映画化の話も噂された。だが、最終章の放映と、最終回の翌週に放送された特別編『もうひとつのラスト・フレンズ』がほとんど総集編だったこともあり、視聴者の信頼を大きく損なってしまった。

 その後、かのドラマの映画化の話が聞こえてくることはない。

 テレビの作り手たちは奇策に走ることなく、コンテンツで正々堂々と勝負すべきである。改編期外しや最終章の連発で一時の数字をとれたところで、長い目で見れば、それは決して得策ではない。

 『ラスト・フレンズ』は、あのまま普通に放映していれば今ごろ上々の評判で、映画化の道も開けていたと私は信じている。

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