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2008年07月26日(土) 10時00分

【トレンド】アサヒビールとカゴメがコラボ、低アルコール野菜カクテルという新しいお酒nikkei TRENDYnet

 手軽に野菜がとれることから、健康志向の消費者に人気の野菜飲料。その野菜飲料をベースにした低アルコールの野菜カクテルが、新しいジャンルのお酒としてアサヒビールから登場した。2007年9月発売の「トマーテ」、2008年3月発売の「ベジーテ」に続いて、2008年6月には第三弾の「ベジッシュ」を発売。CMで盛んにアピールしているから知っている人も多いだろうが、これらの製品は、野菜飲料に強いカゴメと酒類メーカーのアサヒビールがタッグを組んだ、コラボ商品なのだ。

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 まずはどんな味がするのか、まだ飲んだことがない人のために紹介しよう。ベジッシュの商品企画を担当した、アサヒビール酒類本部マーケティング本部商品開発第一部主任の西村壮一郎氏に、どんなシチュエーションで飲んでもらうことを意識して味を決めていったのかも聞いてみた。

トマトジュースベースなのにさらっとした口当たりの「トマーテ」

 トマーテはその名の通り、トマトジュースをベースにしたカクテル。というとウオッカをトマトジュースで割ったブラッディマリーを想像する人も多いと思うが、実際に飲んでみると印象はかなり違う。

 まず、口当たりがさらっとしているのに驚かされる。トマトジュースといえば粘度が高くどろっとしているというイメージだが、トマーテはライト感覚でごくごく飲める。レモン果汁がブレンドされ、ほどよい酸味があるのも口当たりの良さを高めている。

 成分はアルコール度数が5%で、トマト果汁が45%、レモン果汁が5%。「カゴメさんには野菜ジュースといえば100%という観念があったようで、このブレンドを提案したときにはかなりびっくりしていましたし、レモンを入れるのにも驚いていました」(西村氏)。

 アサヒビールの経験からすると、「のどの渇きをいやすためにごくごく飲める」という感覚が、低アルコール飲料には求められるのだそうだ。トマトの素材としてのおいしさを感じさせながら、ごくごく飲める感覚を保つバランスが45%という数字に落ち着いた。さらっとした感じを出せたのは、余分な熱を加えずにトマト果汁を濃縮する、カゴメ独自の「RO濃縮技術」も大きかったという。

果汁入り野菜飲料の飲みやすさを受け継いだ「ベジーテ」

 ベジーテは、カゴメの野菜ジュース「野菜生活100」の原料を主に使用して、アルコール飲料向けにオリジナルミックスにしたもの。見た目はキャロットベースの野菜ジュースというイメージだが、飲んでみるとオレンジの味が支配的で結構甘く、あまり野菜の風味は感じられない。

 「野菜飲料が大きな市場になったのは、キャロット主体で果汁を加えて飲みやすくしたものが登場してから。オレンジが中心の味に仕立てたのも、お酒としておいしく飲めるようにしたためです」(西村氏)。

 果汁入りの野菜飲料がポピュラーになったのは、15年ほど前からだ。ベジーテは、子供のころから野菜飲料を飲んでいた20〜30代の人々がターゲットで、特に健康志向が強い30代に受けているという。トマーテは少し年齢層が上の30〜40代で、トマトジュースが好きな人々が買っているそうだ。炭酸を加えて、のどごしをさらに良くした「ベジッシュ」

 そして最新作のベジッシュは、他の2製品とは違って炭酸が入っているのが特徴だ。こちらはグレープフルーツが支配的な味で、甘い中にわずかな苦みを感じる。ベジーテと同様に野菜の味は前面に出ていないが、炭酸が加わった分だけさらにのどごしが良くなり、のどが渇いているときならごくごく飲んでしまいそうだ。

 「炭酸を入れたのは、飲みやすさを上げるためです。トマーテやベジーテは食後のリラックスタイムに飲んでもらうことを考えて企画しましたが、ベジッシュはグレープフルーツ主体のすっきりとした後味で、風呂上がりや食事中に楽しんでもらうことを狙った」(西村氏)。

 記者はビール党なので、かなり甘めのベジッシュを食事中に飲むという感覚にはちょっと驚いた。だが、低アルコール系飲料の中ではグレープフルーツ味が約半分を占め、特に若い女性の間では、食事をしながら飲むというスタイルが定着しているのだという。

野菜カクテルを新しいカテゴリーとして市場に定着させるのが目標

 アサヒビールとカゴメは、2007年2月に資本提携を結んだ。しかし、野菜カクテルの共同開発がスタートしたのはそれ以前の2005年ごろで、トップダウンではなく現場レベルの交流から始まった。「当時商品企画を担当していた前任者の小野が、トマトを使ったアルコール飲料を作ろうと考えた。そこで当時から、自販機で提携して交流があったカゴメの担当者と、まず水面下で話を始めました」(西村氏)。

 当時開発していた商品は「カロリーオフ」や「糖質ゼロ」といった、お酒に含まれている成分を削っていく方向性のものばかりだった。そこで逆に、素材からなくす方向ではなく、素材を生かした健康志向のものを作ろうという発想があった。「野菜飲料の市場規模は約1200億円あり、そこで新しいアルコール飲料の市場を開拓できないかるはずだと考えた」(西村氏)。

 カゴメと共同開発するに当たって、まず考えたのがトマトジュースとお酒、野菜生活とお酒という組み合わせだ。それぞれトマーテ、ベジーテという形で製品化され、さらに炭酸を加えたベジッシュまでは、企画がスタートした段階から構想していた。「目標は、野菜カクテルという新しいカテゴリーを市場に定着させることです。そのために何が必要かは、いつも考えています。もちろん商品開発も、第三弾のベジッシュで終わらせるつもりはありません」(西村氏)。

 スーパーやコンビニの棚を見ても、トマーテやベジッシュが並んでいるのをよく見かける。コンビニでは350mLで130円程度のチューハイに対し、60円ほど高い190円程度で売られているが、棚をしっかり確保しているところを見ると売れ行きは悪くないようだ。アサヒビールの低アルコール飲料「カクテルパートナー」の販売量は年間約1000万ケースだが、野菜カクテル3商品では年間200万ケースを目標としている。

 ライバルメーカーのサントリーも、野菜ジュースを加えたチューハイの「カロリ。ベジミックス」を2008年7月1日に発売した。新製品が現れては消えていく低アルコール飲料だが、健康志向が高まっていることもあり、野菜カクテルは新しいカテゴリーとして定着しつつあるようだ。

(文/柳 竹彦=日経トレンディネット)

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