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2008年07月26日(土) 10時00分

【トレンド】【特別寄稿】ハワイなら4人で16万円! 「燃油サーチャージ」込み料金でもさらに請求される!?nikkei TRENDYnet

 夏休み、皆さんはどこにお出かけだろうか。

【詳細画像または表】

 今年の夏休み(7月15日〜8月31日)の海外旅行客は、昨年に比べ7%減という予想がJTBから発表されている。その理由こそ、「燃油サーチャージ(燃油付加特別料金)が高い」ということにほかならない。

 この燃油サーチャージとは、一体何ものか。「原油の高騰に伴って、航空会社の企業努力で吸収しきれない燃油価格の一部を、乗客の皆様にご負担いただく追加運賃のこと」(社団法人日本旅行業協会ウェブサイトより)。四半期(3カ月)ごとに改定される。つまり、航空運賃を決めた時点では想定できなかった燃料費の高騰分を乗客に負担してもらおうというもので、航空会社が直接、もしくは旅行会社が代行して徴収する。

 例えば、今年の夏休みにハワイに行こうとすると、燃油サーチャージとして1名当たり往復4万円が追加される。つまり、子供を含め家族4人で行くとすると、合計16万円が旅行代金のほかに追加でかかってくるのだ。そのため、「追加料金でもう一度グアムに行けるではないか」と、考えてしまう消費者が後を絶たないというわけである。

 燃油サーチャージは、航空会社ごとに違う。行き先別、航空会社別の金額は、「比較.com」で調べることができるが、座席を使わない幼児にはかかったり、かからなかったりする。家族旅行をする時は、余計に注意が必要である。

 では、なぜ、こんなにも高いのだろう。

 それは、下図をご覧いただければお分かりの通り、2005年から始まった旅客向けの燃油サーチャージは今年になって、昨年の2倍と大幅に上がっているためだ。

 そして、この高騰はすべて「原油価格」とほぼ並行している。原油価格も今年になって高騰。これでは、たまったものではない。2005年並みの原油1ガロン当り45ドルを下回れば燃油サーチャージは廃止されるというが、現在は165ドル。このまま、海外旅行は“夢”と終わってしまうのだろうか!

 消費者と同様、燃油サーチャージ問題で最も割りを食っているのは「旅行会社」だろう。海外旅行の燃油サーチャージはツアー料金を決める半年前には想定できず、ツアー料金とは別に設定されているのが一般的。旅行会社の収入には一切ならないにも関わらず、燃油サーチャージ高騰で客から「追加料金が高い」と思われるのは、旅行会社なのだ。そのため、旅行会社は航空会社に配慮を求めている。少し前まで赤字で悩んでいた国際線主体の航空会社が2008年3月連結決算で大幅な黒字を出し、国内線主体の会社を利益ベースで逆転したという話を聞くと、「燃油サーチャージのおかげでは」と勘ぐる人が多くなるのも仕方ないことだろう。

 そんななか、H.I.S.は、業界に先駆けて燃油サーチャージをツアー料金に含めて販売するようになった。他社と比較すると少々高く見えるかもしれないが、後々苦情を受けるよりは、気持ちよく買っていただけるという理由からだろう。燃油サーチャージが「込み料金」か、「別料金」か。どちらがよいかは別として、消費者としてはツアーを選ぶ際にもいっそう気をつけなくていけなくなっているのは確かである。

 ただし、「込み料金」にも注意が必要。支払った後に、さらに料金を請求されるケースもある。発券日と出発日が四半期(3カ月)ごとの改定時期をまたぎ、改定後に燃油サーチャージが上がった場合だ(逆に燃油サーチャージが下がると、返金されるケースもある)。

 さらに、燃油サーチャージのほかにも、航空運賃やツアー料金とは別にかかる費用として、空港使用料や出入国税、航空保険特別代金があり、それらを合計すると1人数千円がかかることが多い。あまりに追加料金が多くなると、旅行会社はリスクを負ってでも「オール込み」料金にしなくてはならない日も遠くはないかもしれない。そうしなければ、海外旅行からどんどん消費者は離れていくだろう。

この夏人気の家族旅行は「ポケモン新幹線」!? 

 さて、燃油サーチャージ問題が降ってわいた今夏。家族の旅行先としてどこが人気なのか。ひとつだけ挙げるとすれば、ズバリ!「ポケモン新幹線で行く田舎体験」である。

 海外は高い。ならば、国内だ。ガソリンも高い。ならば、電車にしよう。この機会に子供にも“エコな”体験をさせたい。そう思う親心だろうか。JR東日本では、東北・上越・長野の各新幹線に子供に人気のポケモンを描いた新幹線を走らせている。完全に航空会社のお株を奪った形だ。

 ポケモン新幹線に乗っていく先は、日本の田舎体験やキャンプを売りにしている温泉地。例えば、新潟県南魚沼市の「六日町温泉」。川遊びをしたり、芋掘りをしたり。すでに何年も続けている家族向けの田舎体験企画だが、今夏は、なんと昨年に比べて2倍の人気だそう。また、「ママには控えのホテルが付いてくるキャンプ体験」企画で人気の長野県・白馬八方温泉「ホテル五龍舘」に聞くと、今夏は「父と子の二人旅」が昨年の2倍の売れ行きだそうだ。父と子でカヌーをこいだり、山に登ったり…。燃油サーチャージが高いのなら、家族で「環境を学び、自然を楽しみ、思い出を作る夏休みにしよう」。そう考える賢い消費者が増えているということなのだろう。

 また、今夏は「予約が遅い」のも特徴のひとつ。「お盆明け」を中心に、まだまだ予約もできそうだ。夏休みに入ったこれからでも遅くない。「テレビの前に寝っ転がってオリンピックざんまい」だけではもったいない。海外が高くても国内がある。さあ、夏休みの旅に出よう!

(文/井門隆夫=ツーリズム・マーケティング研究所 主任研究員)

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