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2008年07月26日(土) 08時52分

出資金詐欺事件 捜査終結読売新聞

元社長の細川被告「簡単に解約応じるな」
起訴猶予となった元営業社員の1人が、顧客に配当金額を説明する際に書いたメモ(左)。契約書は様々なタイプが用意されていたが、配当率については明記されていなかった

 秋田市の先物取引会社「ファーストオプション」(破産)の出資金詐欺事件で、元社長細川広明被告(49)が営業社員に対し、顧客の解約や償還に応じる上限額を1日700万円と設定したうえで、「簡単に解約に応じるな」と指示していたことがわかった。捜査関係者が明らかにした。秋田地検は25日、細川被告と元幹部ら計4人を詐欺罪で追起訴し、処分保留で釈放した吉田直哉元監査役(49)と、詐欺容疑で書類送検された元営業社員の男女5人を不起訴処分(起訴猶予)とし、事件の捜査を終結した。

 地検が起訴した詐取総額は計9人からの1億1773万6982円に上った。

 捜査関係者や元社員によると、ファースト社の事務所には社員の営業成績を示す表が張られていた。細川被告は年末、顧客から預かった出資金を多く集めた社員を表彰する一方、成績が悪い社員には「金を集めてこい」とどなりつけ、役職を降格させていた。

 しかし、2004年ごろ、顧客から解約申し入れが増え、新規の顧客開拓も難航。細川被告は社員らに解約に応じないよう指示し、社員らは、出資を渋る顧客に「友人を紹介して」と迫ったという。

 また、細川被告は1999年3月、米ニューヨークに関連会社「ファーストオプションUSAインク」を開設。同社副社長として赴任させた元取締役新見直城被告(63)に、2年ごとに計4回、「研修」と称し、若手社員をUSAインク社や米国の商品取引所に案内させた。だが、幹部には海外取引の実態がないことを伝えていたという。

 一方、地検は、元営業社員らを起訴猶予とした理由について、「元営業社員らは米国研修で海外取引をしていると思っていたが、その後、預託金がほかの顧客に回されていると知った」と一定の犯意を認めたが、「細川被告に海外取引をしていると告げられ、犯意は確定的ではなく、従属的な関与だった」と説明した。

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 ファーストオプションの元社長細川広明被告(49)が2003年以降、札幌市の経営コンサルタント会社「エフアンドオー」の元社長に対し、同社元役員を通じて1億円以上を送金していたことがわかった。細川被告は、元社長らから「業務内容を全部ばらす」と言われ、ファースト社で集めた出資金を「口止め料」として支払っていた。複数の捜査関係者が明らかにした。

 捜査関係者などによると、細川被告は高知県出身。高校卒業後に就職した東京の先物取引会社「日光商品」を退社後、エフ社の監査役やエフ社の元社長が経営していた東京の「ミリオントレーディング」(1996年に秋田市に移転)の取締役を務めていた。

 エフ社の元社長は米国商品ファンドへの投資を装い、顧客から現金をだまし取った詐欺事件で2000年4月、札幌地裁で懲役12年の判決を受け、現在服役中。

 細川被告は、元社長のもとから逃げ、ミリオン社をファースト社に商号変更し、エフ社の手口をまねて顧客から出資金を集めた。しかし、元社長の怒りを買い、元社長の弟のミリオン社元役員を通じて03〜04年に約1億円、05年に735万円を送金したという。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/akita/news/20080726-OYT8T00037.htm