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2008年07月25日(金) 13時49分

【ストーカー判事初公判(6)】ストーカーに走った理由は…下山被告、心情を吐露産経新聞

 《証言席に座った下山被告の友人の男性弁護士は、今後、下山被告を友人として支えていくことを改めて表明した》

 友人の弁護士「私は司法試験予備校で講師をしているので、そこの紹介はできます」

 弁護人「彼が法律の世界に携わることについて、あなたはどう思いますか」
 友人の弁護士「せっかくこれまで蓄積した知識があるのだし、もう一度やるというならば挑戦してもらいたいと思います」

 《ここで弁護側の質問が終了し、友人の弁護士は退廷。続いて裁判長が「被告人、前へ」と告げると、下山被告は傍らの長いすから立ち上がり、証言台へ進み出て、両手を体の前で組み、まっすぐ裁判長の方を向いて立った。いよいよ被告人質問が始まる》

 弁護人「まず、本件についてどう考えていますか」
 下山被告「反省しております」

 弁護人「逮捕当初はどうでしたか」
 下山被告「気持ちの整理がついてない分もあり、今ほどはっきりとは…」

 《落ち着いた口調で慎重に言葉を選びながら答えるが、声は小さく、傍聴席の物音にかき消されて語尾が聞き取れない》

 《続いて、弁護人は逮捕当初の『恋愛目的ではなかった』という、下山被告の供述の意味について質問。ストーカー規制法違反罪は、恋愛感情やその他の好意感情などがなければ規制対象とならないため、下山被告に否認の意図があったのがどうかが注目されていた》

 弁護人「あなたの当初の供述、これは否認していたのですか」
 下山被告「あえて否認するということではなかったが、自分自身の気持ちが良く見えていませんでした」

 弁護人「あなたは、この件について考え続けた結果、どういう結論になりましたか」
 下山被告「そこに至る動機は…。私自身が、自分の価値観を人に押しつける。それが、自分自身を満足させることにつながっていました」

 弁護人「どのような気持ちだったのですか」
 下山被告「被害者の方と交際を始めたときの気持ちを、多少引きずっていたと思います」

 《被害者である20代の裁判所職員の女性と「交際していた」という下山被告。弁護人は、当時の恋愛感情についてさらに突っ込んだ質問をする》

 弁護人「恋愛感情を自認するようになったのは、どうしてですか」
 下山被告「当時の自分の気持ちを振り返ると、当時、被害者の方に対して恋愛感情を持っていたのは間違いないと(思う)」

 弁護人「被害女性と個人的に交際があったのはいつからですか」
 下山被告「昨年の4月です」

 《30歳近い年齢差がある2人の仲は、上司と部下の関係から“交際関係”にどのように変化したのか。弁護人は「(被害女性は)年齢的にも相当離れた方ですよね…」と遠慮がちに前置きしたうえで、交際に至る経緯について聞いた》

 下山被告「被害女性のプライバシーにかかわることが多いので…。私が(女性から)話を聞いたり、悩みを打ち明けられたりする中で…」

 弁護人「被害女性には、あなた以外に交際相手がいました。その話を女性から聞いたときは、どう思いましたか」
 下山被告「親にも、恋人にもいえないことを(女性から)相談される中で、新たな交際相手のことを聞きました。それは、あまり信頼のおける相手ではないと聞きました。詳しくは以前提出した陳述書に書いてあります」

 《女性のプライバシーを慮ってか、下山被告は「ライバル」と女性の関係について法廷で話すことを避けた》

 弁護人「どう思いましたか」
 下山被告「それまで(新しい交際相手について)聞かされていた内容が内容だったので、『本当にそれでいいのだろうか』という気持ちがありました。他の男性ならばよいのですが…」

 弁護人「それは被害女性を思う気持ちからですか。今現在は、どう思っていますか」
 下山被告「自分自身の価値観を被害女性に押しつけることで、許されることではありません」

 《逮捕当初は、ストーカーメールを送った目的について「彼女のため。幸せになってほしかった」と話していたという下山被告だが、独善的な“暴走行為”であったことを、小さな声ではあるが認めた》

 弁護人「被害女性の交際相手に、嫉妬心を抱いたのではありませんか」
 下山被告「そういう面もあったと思います」

 弁護人「むしろそれが中心では」
 下山被告「自分自身の価値観としては、新しい交際相手の行動があまりにも常軌を逸していると思いました。(ストーカーメールは)その価値観を押しつけようとした結果だと思います」

 弁護人「被害女性が新しい交際相手と近づき、一方であなたから離れていくという焦りもあったのではないですか」
 下山被告「今年3月で(甲府地裁都留支部から)転勤することが分かっており、これまでのようには(交流)できないと。そうなる前に、交際を始めた当時の、ある意味の良好な関係になれればと。そんな中で、自分の行動できる期間も限られていました」

 《転勤を前に、女性との関係に焦りを募らせていったという「揺れる男心」を訥々と語る下山被告の証言に、法廷には神妙な空気が流れるが、弁護人はさらに切り込んだ質問を続けた》

 弁護人「ストーカーメールを発信した今年2月19日ごろ、あなたは被害女性とは親しく付き合っていなかったのでは」
 下山被告「転勤間際ということもあり、夜に行動する時間が限られ、去年の12月までのようなこと(交流)は、物理的にも時間的にもできませんでした。ただ、普通に話はしており、疎外感(を感じた)ということはありませんでした」

 弁護人「被害女性から交際を断られたことはありますか」
 下山被告「明確に、そのように言われたことはありません」

 弁護人「あなたは、(女性と)そのような関係でもいいと思っていましたか」
 下山被告「それはそれで、私としては充実する時間を過ごすことができたのでよかったです」

 弁護人「転勤して以降は、被害女性とはどのような交際をしようと思っていましたか」
 下山被告「転勤後の新しい仕事を考えると、時間的にも距離的にも(交際は)無理だろうと…」

 《「女性と会話するだけの関係でも充実していた」というが、それではなぜ下山被告はストーカー行為に及んだのか。ここで、「この質問には真摯(しんし)に答えてくださいね」と弁護人が念を押した》

 弁護人「なぜストーカーメールをしたのですか」
 下山被告「自分自身の自己満足。自分が被害者に対して、何かできるという思い上がった考えがあった。恋愛感情に裏打ちされたものだとは思いますが。…そういう気持ちで、最後の一線を越えてしまいました」

 弁護人「ストーカーメールを送っているときは、どういう思いでしたか」
 下山被告「非常につらい思いでした。ストーカーメールについては被害者から相談を受けていましたが、そのときの被害者の反応、感情が手に取るように分かりましたから…。何となく『悪いことをしてるんだ。やめなければいけない』という気持ちはありました」
    =(7)に続く

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