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2008年07月25日(金) 12時24分

【ストーカー判事初公判(3)】「司直の手に委ねるぞ」自作自演、ストーカー犯に正義のメッセージ産経新聞

 《証拠の内容を説明する検察官の声が法廷に響く。下山被告は傍聴席から見て左側の被告人席に腰かけ、伏し目がちに聞いている》

 検察官「続いての証拠はメールアドレスの送受信の状況、平成20年3月31日までの3種類のアドレスのメールです。下山被告のパソコンのメールアドレスからのメール、被害者との日常的なメール、それから第三者を装って送られたメール…」

 《検察官はここで、下山被告が自分のメールから、“ストーカー犯人”にあてて第三者を装って送ったメールの内容を読み上げた》

 検察官「貴殿の行為はストーカー規制法違反に当たり、被害者は18日に警察に届け出ることを承知しました。今後は司直の手に委ねるので、通告します。甲府地方裁判所都留支部支部長 下山芳晴」

 《このメールの内容を見る限り、下山被告は、自らの行為がストーカー規制法違反に当たると自覚していたようだ。下山被告は、“犯人”に当てたメールを一度被害者に送信し、了承を得た上で送信していた》

 《検察官の説明を、時折小さくうなずきながら聞いている下山被告だが、検察官が言い間違えると、顔を上げて検察官を見つめる。その姿は、正面に座っている渡辺康裁判長の姿と変わりない。これまで裁判官として判決を下してきた公判では、このような姿で聞いていたのか》

 検察官「下山被告は3月中旬、会員になっていた甲府市のインターネットカフェに『転勤するので退会したい。会員のデータを消して、入会申込書を返してほしい』と申し出た。被告の車両からは漫画喫茶のレシートが出てきた」

 《検察官は続いて、被害者の女性の供述調書を読み上げた》

 検察官「下山被告とは一時親しくしていましたが、積極的にドライブに誘ってくるのがうっとうしくなりました。私が同い年の男性を好きになったと話すと『好きになるのは自由だけど、その男はどうだろう』『ぼくは君を束縛したつもりはない。君の態度はカチンとくる。ぼくのプライドが許さない』などとメールが来るようになりました。メールを返さないでいたら、2月19日に誰からか分からないメール(起訴事実に含まれている1通目のメール)が来ました。24日に下山被告に相談すると、下山被告は『許せないな。君に怖い思いをさせるなんてとんでもないヤツだな』と言いました。それから下山被告はまたメールを送ってくるようになりました」

 《ストーカーメールで女性の気を引きたいという下山被告の“作戦”は成功した。メールをきっかけに、再び女性と親しくなれると信じた下山被告だが、その思いこみが次なるストーカー行為に走らせた》

 検察官「しかし、下山被告は私が頼んでもいないのに、『Vちゃん(被害者)の車を見かけたので不審者がいないか見張るよ』などのメールを送ってくるようになりました。その後、交際相手の家に、声を変えた感じの電話がありました。3月18日に警察本部に呼ばれましたが、その夜、『県警本部に何しに行ったのかなぁ』というメールが来たので、ぞっとしました」

 《しかし、女性が警察に相談してから、ストーカー捜査が本格化。女性の気を引くこともできず、作戦が失敗した下山被告は、ついに自らの犯行を打ち明ける》

 検察官「4月8日、下山被告から、『実は、すべてのストーカーメールを送ったのは僕です』というメールが来ました。これまで何くわぬ顔でメールを送っていたのかと怒りでいっぱいになりました。私から(被害の)相談を受けていたのにメールを送ってきた被告が許せません」

 《被害者の怒りを理解しているのか。下山被告の表情に変化はない。続いて、検察官は下山被告の供述調書の一部を読み上げ始めた》

 検察官「被害者を1人の女性として守りたいという意味での感情はあった。私は被害者の交際相手に対しては低い評価しか与えていなかった。交際相手と別れることで女性が幸せになれると思った。恋愛観情を充足させる目的と思われることに異義はない。メールの送信者は架空の男という設定にした。交際相手が、彼女がメールの送り主と交際していると思い、嫉妬(しっと)し、別れることを期待した」

 《時折、メモを取りながら検察官の言葉を聞く下山被告は落ち着いていて、強烈なメールの文面とのギャップが際だつ。続いて弁護人が下山被告の現段階での陳述書、被害者との示談経過などの証拠を申請。情状証人として、実弟と同僚弁護士の証人尋問が行われることになった》
     =(4)に続く

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