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2008年07月25日(金) 14時37分

ヘッジファンドが引きこす「日経平均1万円割れ」の恐怖ダイヤモンド・オンライン

「日経平均株価が1万円割れを起こすのではないか」。現在、そう予言する市場関係者は少なくない。もし本当なら、2003年4月、ソニーの決算が大幅減益に陥ったことに端を発し、株価がバブル崩壊後最安値となる8000円を割り込んだ、「ソニーショック」以来の事態だ。

 米国でサブプライムショックが起きた昨年以降、株式市場では長らく不安定な地合いが続いている。米国経済の失速懸念でドル安が進んだ結果、原油をはじめとする商品相場には大量の投機資金が流れ込み、物価がみるみる高騰、世界的な景気減速不安が募っている。米国金融機関の決算不安が一時的に和らいだ直近において、日経平均株価は1万3000円台を回復しているものの、投資家は「模様眺め」を続けている状態だ。

 不安はまだまだ続く。「株式市場は今年後半にも大きな調整に見舞われる可能性がある」と語るのは、金融市場に精通する草野豊己・草野グローバルフロンティア代表だ。

 その相場調整の「主役」は、世界の金融市場で活躍する投機筋。とりわけ気炎を上げているのが、主に日経平均、債券、商品などの先物に投資して大きなリターンを狙うグローバル・マクロや、マネージド・フューチャーズといった、ヘッジファンド勢だ。その多くは高性能サーバで投資分析から大量の売買発注、ポジション管理などを行なっているため、彼らが金融市場に与える影響は絶大である。

 だが、世界的に投資環境が悪化するなか、ここに来てヘッジファンドの多くは「今年上半期の運用成績が過去十数年間で最悪」という苦境に陥っている。そのため、何とか利益を捻出しようと四苦八苦しているのだ。

 実は、この5〜6月に日本の株式市場が一時回復基調に乗り、その後再び暗転した背景にも、彼らの存在がある。景気後退とインフレが同時進行する「スタグフレーション」の兆しが見え始め、株式と債券が同時に下落する事態に陥ったため、システムエラーが続出。その結果、債券を買って株を売っていた業者を中心に、日本株がにわかに買われた。一時的な上昇に群がった一般投資家は、その後の彼らの「売り抜け」で損失を増やした。

 現在は、プログラムの修正に苦慮している業者も多く、世界的な信用収縮で資金の借り入れも困難になっている。資金繰りに窮して破綻する業者も増加中のため、苦境に立たされた彼らが、今後ポジションを落とさざるを得なくなるのは必至だ。そうなれば、株式市場からは膨大な資金が流出して、大きな調整に見舞われる可能性がある。

 世界の株式市場を牽引する米国市場を見れば、過去1年間で株価が高値から2割以上下落するベアマーケット(弱気相場)に入っている。1960年代以降のベアマーケットの平均下落率は3割で、短くても14〜15カ月、長いものは2〜3年続くこともある。ここに来て、米大手金融機関の新たな不良債権問題も発覚し始めたため、投資家は少なくとも年内は油断ができなそうだ。「今後の米国の調整は、日経平均株価の1万円割れを引き起こすインパクトもある」という専門家の予測も、現実味を帯びてくる。

 今後、波乱含みの相場で個人投資家が勝ち残るには、信用、先物、オプション取引など、下げ相場でも機転によって儲けられるテクニックを身につけること。個人といえども、プロと同等の投資眼をもって臨まなければ、以前のように簡単には儲けられないだろう。
(ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

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