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2008年07月25日(金) 17時17分

国民的視点に立った五輪代表選手の選考のあり方オーマイニュース

 8月開催の北京五輪を目前に、最後まで選考が遅れていた野球とサッカーの代表選手がやっと決定した。

 この両球技は、どちらもプロリーグが組織化されていることもあり、おのずと国民的人気も高い。しかも、数少ないメダルの可能性がある種目とあって、選考前から代表選手に対する国民の関心も高かった。

 まず、野球の日本代表である星野ジャパンは17日、その陣容が明らかになった。代表チームは、10球団から選出された24名の選手で構成され、星野監督をもってして、「現時点で最強のメンバー」と言わしめた。

 主な選手では、野手が、新井(阪神)、宮本(ヤクルト)、稲葉(日ハム)。投手が、川上(中日)、ダルビッシュ(日ハム)、藤川(阪神)など。基本的には、アジア予選を勝ち抜いたメンバー19名を中心に選出された。

 星野監督に最強と言われても、なんとなく合点がいかないのは、今季、絶好調の金本選手(阪神)や岩隈投手(楽天)など、両リーグの看板選手が出場しないことだ。が、4番バッターと先発完投型投手だけを集めたチームが必ずしも強いとは限らないのは、某金持ち球団がすでに実証してくれており、ここは星野監督の選出方法を信頼したほうがよさそうだ。

 それにしても、隔世の感がある。五輪に対するプロ側の考え方である。

 五輪にプロ野球選手が解禁されたのが、8年前のシドニー大会。それまで五輪の代表選手は、社会人や大学野球のアマチュア選手で編成されていたが、このシドニー大会から、プロ選手も解禁されることになった。だが、五輪の開催期間はペナントレースの真っ最中。球団としては、もろ手を挙げて全面協力というわけにはいかない。それでも、紆余(うよ)曲折を経て、やっとのことで松坂投手(現レッドソックス )など、8名のプロ選手の参加にこぎつけたが、初めてメダルを逃がす結果となった。

 また、2004年のアテネ大会からは、全選手をプロ選手で編成したが、各球団のお家の事情などから、必ずしもベストメンバーが組めたとは言い難く、銅ダルに終わった。それから見れば、今回の星野ジャパンに選出された24名の選手については、さまざまな評価があるのも事実だが、10球団からえりすぐられた、堂々たるオールジャパンであることには間違いなく、メダル期待する国民の声が大きい。

 一方、サッカー五輪代表チームは、大方の期待を裏切った。23歳以下で構成される五輪代表は、オーバーエージ枠(24歳以上の選手が3名まで認められる)という特別ルールがあるが、日本はこれを使わず、純粋に23歳以下で臨むことになった。

 当初は、大久保(神戸)や遠藤(ガンバ大阪)などが候補として挙がっていたが、チームの事情やけがなどの理由で、最終的にはオーバーエージ枠は使わないことになった。だが、世界では、ワールドカップに重きを置いている観のある王国・ブラジルでさえ、オーバーエージ枠にロナウジーニョやメッシを入れることが決まった。

 今や世界のサッカー強国はワールドカップと相並び、五輪にも結果を求め、積極的にオーバーエージ枠を活用する潮流だ。その中、さまざまな理由で、オーバーエージを断念せざるを得なかった反町康治監督は、選考に当たり、サッカーや日の丸に対する情熱や誇りなどのハート面を重要視したというが、オーバーエージ枠を使わないチームがメダルに絡めるほど、世界のサッカーは甘くない。

 五輪は4年に一度のスポーツの祭典である。日ごろ、日の丸や君が代に特別な感情を抱かない人でも、五輪で、日本選手が表彰台の中央に立った場面で見る日の丸や君が代は、格別なはずだ。

 だからと言って、この感情を利用して国威発揚を図るスポーツ振興であっては困りものだが、スポーツ選手の活躍がテレビ桟敷の愛国心をくすぐるのであればいっこうに構わない。思想信条を越えて、日本チームや日本人選手が活躍する姿を見るのは掛け値なしにうれしい。

 その意味で、五輪代表チーム、選手は、現時点での最強であらねばならない。しかし、サッカーはその期待に十分応えた選手選考であったのだろうか。

(記者:藤原 文隆)

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