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2008年07月25日(金) 12時23分

野茂引退、米国の報道は?(上)〜米国人が記憶する「個性と実力」オーマイニュース

 大リーグで活躍してきた野茂投手の引退宣言は、日本の野球ファンに衝撃を与えた。日米通算で200勝越えや、大リーグでの2度のノーヒット・ノーランの記録は偉業だ。

 日本の多くのマスコミが、野茂投手のアメリカでの成功と、ハングリー精神、トルネード投法の原動力の練習で鍛え上げた強靭な下半身を賞賛した。これは昔、野茂投手の渡米直前に厳しい声をあげ、成功確率を疑問視していた論調とは大きく異なる。

 野茂投手は、ドジャースなど多くの球団を渡り歩きながら、野球人生後半は、けがとも戦った。

 私は少し気になる部分があり、アメリカ在住の100人ぐらいにメールで質問してみた。

■一般人の素朴な返事

 趣味が野球ではないアメリカ人、アメリカ在住の日本人、ドジャースのライバルチームのファンの人にも意見を聞いた。すると、アメリカでの反応は予想と少し違うものだった。

 20代のマリナーズのファン(米国人)に、野茂の引退宣言の感想を聞くと、「えっ、引退の話は、今聞いて知ったよ」、「野茂は良い投手だったよ」と、素朴な返事だけが返って来た。

 念のために書くと、野茂の引退宣言を、今のアメリカでは、知らない人が多数いる。野茂投手全盛時期に熱狂的にトルネード投法を知れ渡らせた、過去のアメリカの報道とは、今回はだいぶ違う。

 ロサンゼルスのドジャースなど、野茂投手が在籍した複数の球団の地元ファンと、でも、やはり少し温度差があるようだ。

 そのロサンゼルスでも、1996年ごろの野茂投手の雄姿を知らない10代や、20代前半の若者が増えてきた。

 振り返ってみると、25年ほど前の野球漫画では、日米野球の場面において、大リーガーの打球が日本の野手のグラブを弾き飛ばし、「なんてすごい打球なんだ」と日本の監督に言わせるような、怪力誇張の描き方をしていた。

 そんな一時代前の雰囲気を吹き飛ばして、現実の日米野球や野球漫画にも大きな影響を与えたのが野茂投手だった。

 日本でも、アメリカでも、フォークボールと全盛期は150キロを越えていた速球が威力を発揮した。しかし、AP通信などの報道によると、大リーグのバッターはそれ以外にも野茂に悩まされた。

 それは、野茂投手の得意のフォークが、変化球スプリットフィンガーに類似し、対戦時に悩んでいたと言うのだ。

■ラソーダの大賞賛

 読者が違うので当然だが、アメリカと日本では、野茂投手の報道の仕方も少し違うようだ。日本のマスコミ報道では、ほとんど流れなかった言葉に、野茂投手の“品格”がある。

 dignity and character

 アメリカのAP通信は、恩師のラソーダ元監督が、野茂の功績について語るときに使った賛辞の2単語(dignity=気高さ、高潔さ、character=高潔な人、人格者)を、そのまま掲載した。

 ラソーダ元監督が、野茂投手の“品格”について言及した箇所まで、カットせずに報じた日本の新聞やテレビは少なかった。注目したい箇所が日米で異なるのだろう。

 ロサンゼルス・タイムズの野茂投手引退記事関連では、一般の意見もブログで、受け付けていた。以下は読者の感想だ。(参照:ロサンゼルスタイムズの野茂選手引退報道)

・素晴らしい選手であり、先駆者だった(野茂)ヒデオ思い出をありがとう。

・(野茂投手が渡米直後)ほとんどが、彼のパフォーマンス(トルネード投法の真価)を疑ったとき、野茂は孤独と戦い、可能性(確率)を信じて挑戦しました。野球への彼の情熱は、太平洋にかける(日米の)橋になりました。

・野茂、貴方が私の家族の記憶の中に常にいます。

・ノーヒット・ノーラン試合達成直後の、彼の誇り高い微笑を覚えています。最後の侍、私のヒーロー

(引用以上)

 アメリカ人よりも個性的であった野茂投手。そして、自分の投球が、どこまでアメリカで通用するか挑戦し続けた野茂投手。本物の個性的な実力とは国籍を超えて通用すると言う事ではないだろうか。

 野茂投手の活躍したロサンゼルスでは、他にも多くの日本人が成功を夢見ている。

(記者:谷口 滝也)

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