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2008年07月25日(金) 12時06分

雇用契約さえ定かでない登録型ヘルパーオーマイニュース

 財団法人「介護労働安定センター」から、介護事業所と労働者の実態調査が発表されました(7月14日)。そこには現在の介護問題がよく表れています。

■訪問介護職員の7割強が登録型ヘルパー

 訪問介護は利用者から頼りにされていますが、事業所としては収益が低いものです。訪問介護員の7割強を登録型ヘルパーが担っています。「登録型」は、労働時間を事前に定めず、訪問介護事業所に登録、利用者の需要とヘルパーの都合が一致する日に勤務する人たちが主力になっています。

 当然ながら、雇用契約が明確ではない。せめて、月ごとの雇用契約を結んだらという意見も強い。 7月6日の「全都ヘルパー集会」での報告では、登録型ヘルパーの月収は10万円未満が7割を占めています。しかし、厚生労働省の調査では平均20万円としています。20万円に達するには毎月160時間(一日8時間×20日)働かなければなりませんし、移動時間などを考えればありえないし、経営的にも支払い能力を超えた金額になります。

 別の厚生労働省資料(図参照)を見ると月給制の分を引用しているのだと思われます。訪問介護で、月給は 20万円程度で、全体の人数比も約2割です。7割を超える時給の人たちは76900円。「登録型」は自分の働きたいときに使えるから良いという主張もありますが、それはごくわずかで、「登録型」にしないと経営的にやっていけない仕組みになっているのです。

■職員経験年数では3年未満が約3割

 労働条件の悪いという評判は広まり、人が集まらず、介護職員を養成する学校の募集停止、閉鎖が相次いでいます。今までは不況でほかの仕事に就けないのでなんとか確保できていましたが、すでに敬遠されています。離職率も、21.6%とかなり高いものとなっています。

 もともと、年功を配慮した仕組みが障がい者施設などではありましたが、それも廃止され、経験があってもなくても、同じ報酬であり、補填(ほてん)する仕組みもありません。質を問わない事業になっているのです。勤続年数も平均3.1年です。経験を重ねた人たちは貴重な財産であっても、その人たちを活(い)かす方法はありません。人数さえいればよいという職場になっています。その人員数さえ確保できないのですが。

■運営上の問題

 「今の介護報酬では人材確保等に十分な賃金を払えない」が64.7%と最も多く、次いで「良質な人材の確保が難しい」45.2%、「指定介護サービス提供書類作成が煩雑で時間に追われる」43.2%の順となっています。法に定められた職員数の確保すら難しい時代になっています。

 ここでは、以上の3点を挙げておきます。問題の根はもっと広いものだと思います。過日、福祉専門学校の責任者と話していると、消費税を上げて福祉にまわすと政府は言っているので、それに期待しているという。

 そうすれば報酬も上がり、志望者も増えるというもくろみのようでした。このように、関係者にも、どう解決していくかの合意形成が進んでいないようにも思えます。はっきりしていることは、報酬改善が焦眉(しょうび)の課題であり、現在ある財源を組み替えるか、新たな税負担にするかということですが……。

(記者:下川 悦治)

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