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2008年07月25日(金) 00時00分

ウィキペディアとは違うケータイ辞書・事典の横断検索サービス「JLogos」読売新聞


小島孝治  こじま・こうじ
エア社長
 1972年広島県生まれ。97年成蹊大学工学部電気電子工学科卒業後、テレビ東京に入社。2001年に子会社のテレビ東京ブロードバンドに出向し、テレビ番組のウェブサイト運営や携帯サイト立ち上げに携わった。2005年にエアを設立し、「JLogos」を始めた。

 携帯電話端末向けの辞書・事典横断検索サービス「JLogos(ジェイロゴス)」は、125冊、250万語をデータベース化したものだ。最新内容を更新するだけでなく、「たまご事典」や「焼肉事典」といったデジタル辞典も取り込み、ウィキペディアよりも信頼度の高いデータベースの構築を目指す。エアの小島孝治社長に今後の展開を聞いた。

125冊、250万語収録、買えば132万円相当
——このサービスを考え出したきっかけは?

小島 もともと言葉遊びが好きで、言葉にはこだわりがありました。合コンや異業種交流会などでは、それぞれの業界用語や専門用語がどんどん飛び出し、意味がわからないことも多いですよね。そのたびに意味を尋ねていたのですが、どうせなら専門用語を簡単に調べられるサービスがあればなあと思ったのが、開発の動機です。

 テレビ東京に入社した後、テレビ東京ブロードバンドに出向し、テレビ東京の経済番組のサイト運営などを経験する中で、2004年春には、有斐閣「経済辞典」など6種類の辞書を携帯で検索できる「ビジネス総合辞書」サービスの構築にも携わりました。

 余談ですが、このときシステム開発を委託していたのが、オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)で、ホリエモン(堀江貴文元社長)とは毎週打ち合わせをしていました。私はホリエモンと同年齢で、まさにホリエモン世代なのです。

——独立してこのサービスを続けようと考えた理由は?

小島 大学時代にインターネットに出会い、通信と放送の融合の最前線で仕事ができると思ってテレビ局に入社しました。新規事業を企画して、直接、役員の机に企画書を置いたこともありましたが、なかなか採用されませんでした。10年後の先輩をみても自分がやりたいことは実現できそうにないという壁を感じたので、退職することにしました。

 辞書サービスは当時の携帯サイト構築費用と比べて格段に安い値段で作り上げたのですが、私自身の人件費を入れると赤字でした。ほとんど私一人でやっていて、だれかに引き継いだとしても会社にとってはお荷物になるだけでしたので、2005年1月に独立するときに、営業譲渡を受けました。

 出版社は当初、テレビ東京だから辞書を提供してくれていたわけですが、担当者との間に築いた人間関係が生きて、独立間もないベンチャー企業にも提供を続けてくれることになりました。人づてで紹介された別の出版社にもあたって辞書の数を6から53に増やし、9月に「JLogos」として再スタートしたわけです。

——JLogosの意味は何でしょう?

小島 「ジャパン」の頭文字「J」と、ギリシア語で言葉という意味のLOGOSを組み合わせました。会社名の「エア」もバビロニア神話の知恵の神様の名前からとりました。いずれも知的なサービスを扱いたいという思いを込めて命名しました。

——どのような辞書が入っているのですか?

小島 国語、古語、英和、和英辞典はもちろん、百科事典や新語辞典、法律や経済などの専門辞典、さらには会社四季報や世界各国要覧といったデータベース系、医療系、人名系、年号や単位変換などの便利系、動物や魚類、昆虫といった自然系の辞書・辞典が入っています。旬の魚がわかる事典など雑学系も充実しており、日本実業出版の「トヨタ語の事典」のような業界用語事典も含まれています。いろいろ辞書は出ていますが、その分野で一番だと私が思ったものを入れてあります。

——辞書は全部で何冊収録されているのでしょうか?

小島 現在125冊、250万語で、すべて本で購入した場合は132万円相当になります。それが月々315円で使い放題です。電子辞書は多くても100冊、50万語程度。しかも、電子辞書にはない、引いて楽しくなるようなコンテンツが入っています。

——電子辞書にないコンテンツはどのようなものですか?

小島 たまご、フィギアスケート、焼肉用語事典などです。たまご事典は、卵の卸会社にあった情報をもとに、卵の構造や養鶏の技術、卵料理のレシピなど卵に関するものをデータベース化しました。評判がよければ、出版するかもしれません。

 たとえば「富士山」というキーワードで検索すると、百科事典や古語辞典など43ものデータベースの検索結果一覧が表示されます。「花火事典」で「富士山」が花火の名前でもあることがわかるように、一つの言葉でいろいろなことがわかるのです。

http://www.yomiuri.co.jp/net/interview/20080725nt07.htm