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2008年07月25日(金) 22時31分

官房長官vs日弁連会長 法曹人口増員めぐり舌戦産経新聞

 裁判官、検察官、弁護士という「法曹」の人口増員をめぐり、町村信孝官房長官と日本弁護士連合会(日弁連)の宮崎誠会長の間で“舌戦”が勃発(ぼっぱつ)した。増員のペースを落とすよう求めた日弁連の緊急提言に対し、町村長官が即座に「見識を疑う」と批判。これに対して宮崎会長が25日、「長官発言が不見識」と反論した。派手なやり合いに注目が集まるが、法曹界からは、法曹の質維持のための冷静な議論を求める声が出ている。
 舌戦勃発の発端は、「法曹人口の急激な増大は、司法制度の健全な発展をゆがめる」とする今月18日の、日弁連の緊急提言だ。司法試験の合格者を、平成22年ごろには3000人程度に増やす政府目標のペースダウンを求める内容だった。
 増員速度の抑制を求める理由として、日弁連が挙げたのは、法曹の質が低下しているのではないかとの危機感。一部の法科大学院で、厳格な成績評価や修了認定が出されていないことに加え、法曹人口の急激な増加で、弁護士事務所への就職が困難になり、先輩弁護士からの指導を受ける機会が減っているからだ。
 一方、提言発表の当日、町村長官は定例会見で日弁連批判を展開した。
 法曹の質の維持は重要だとした上で、「自分たちの商売の観点で、急にそういうことを言い出すのは、私は正直言って日弁連の見識を疑う」と批判。日弁連を「今まで司法制度改革に携わってきた立場をかなぐり捨てた」ときって捨てた。
 これを受け、宮崎会長は25日になって反撃。町村長官の地元でもある札幌市で行った会見で、「官房長官の発言が、やや不見識ではないかと思っている」と“ジャブ”を放ち、続けて「司法改革を後退させる気はなく、提言の趣旨が伝わっていない」と官房長官の理解不足を指摘した。
 「不見識」と応酬し合う政府首脳と法曹界首脳の舌戦。実際、緊急提言には、法曹界内部からも「弁護士が増えて仕事が減るからだと思われてしまう」と危惧(きぐ)する声や、「司法制度改革の趣旨に逆行する」との批判は出ている。宮崎会長の感情的ともとれる発言は、こうした意見に敏感になっているためとされる。
 ある法曹関係者は、「官房長官も会長も、法曹の質を維持しなければいけないという点では一致しているはず。いまこそ冷静かつ建設的な議論を具体的にするべきでは」と話している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080725-00000991-san-soci