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2008年07月24日(木) 18時38分

元中国残留孤児、踏んだり蹴ったりの夏!?オーマイニュース

 厚生労働省ホームページを時々巡回しているのですが、これが先日リニューアルされまして、トップページ右上に新しいコーナー「フォトレポート」が設置されていました。

■関連リンク
厚生労働省
フォトレポート

 このページは今のところ、舛添要一厚生労働大臣の活動報告に使われているようです。

 ここで、目に留まった記事がありました。

 「中国残留邦人等への新たな支援策が決定されてから満1周年の節目を迎えるため、中国残留邦人の代表が舛添厚生労働大臣と面会し、御礼を述べました」

というもので、7月9日付です。

■人に優しい政治に厳しい国、日本

 背景としては、2002年12月以降、元残留孤児らが「国が速やかな期間措置を取らず、帰国後も十分な支援をしなかった」として起こした訴訟がありました。

 原告1人あたり3300万円の賠償を求めたもので、全国15地裁に提訴した原告の総数は最終的に約2200人にまで増加していましたが、神戸地裁で1勝を挙げたほかは敗訴を重ねていました。

 こうした状況を受けて、2007年1月の東京地裁判決後、安倍首相(当時)が原告団代表と面会して支援策の検討を指示すると伝えました。

 その支援策の内容が2007年7月6日に与党から示され、8日に原告団・弁護団が受け入れを表明しました。その直後の参院選で安倍政権は粉砕されましたが、11月28日には改正中国残留邦人支援法が成立しました。制約の多い生活保護費に代えて、基礎年金や生活支援給付金を支給することなどを内容とするものでした。

 同時に、この支援策を受けて訴訟を取り下げた場合に、原告側に訴訟費用を請求しない措置が取られました。

 提訴の際に本来なら印紙代として総額約2億5000万円が必要です。大半の原告は、経済的理由から支払いが猶予されていましたが、敗訴したまま訴訟を取り下げれば本人負担が発生し、支援の趣旨から外れてしまうためでした。

■追いはぎ3億円事件

 さて、冒頭の記事が目に留まったのには理由があります。読売新聞(ウェブ版)は同じ7月9日付で、「残留孤児と弁護団、訴訟費で対立…大半敗訴も、国支援得て」という記事を掲載しています。以下、概要を紹介します。

 同記事によると、原告団と弁護団の間の契約は、「勝訴(判決確定)あるいは和解した場合に、賠償金または和解金の中から弁護士費用が支払われる」となっています。この種の集団訴訟では一般的な内容とのことです。これに従うと、訴訟を取り下げた場合には、原告から弁護士へ弁護士費用は支払われません。そもそも、原告の大部分は元手を持っていません(ということになっています)。

 ところが、東京で主に活動を担ってきた関東訴訟の弁護団が「和解と同様の成果はあった」として原告1人当たり20万円の費用を請求することを3月末に決定しました。

 関東原告団は全体の半数に当たる約1100人であり、総額では約2億2000万円になります。この動きを見て他地区の弁護団も請求を始めているとのことです。

 必ずしも横並びでもなく、いくらか遠慮している地区もあるようですが、それでも総額は3億円以上になるものと考えられます。結果的に、国が支援策の一環として訴訟費用(約2億5000万円)を請求しなかった措置は、全く無意味になっているようです。

 オーマイニュースでは1年前に支援策がまとまって以降、続報がないようです。一体どうなっているのでしょうか。

(記者:渡辺 亮)

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