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2008年07月24日(木) 00時00分

(中)共聴設備改修 トラブルの種読売新聞


地デジ対応設備への改修が進む千葉市美浜区の高洲二丁目団地(本社ヘリから)

 「地デジとは何?」「地デジのメリットは?」。千葉市美浜区の大規模団地・高洲二丁目団地(全47棟、1430世帯)の管理組合がテレビ共聴設備のデジタル化の検討を始めたのは2005年6月だった。

 同団地では、各棟にアンテナを立てるよりもケーブルテレビ(CATV)を引いて全棟で共同受信する方が安上がりだったため、1993年からCATVを利用している。しかし、設備はアナログ用で、デジタル用に改修するには多額の負担が必要。理事会で検討を重ねたが、「今までの設備が無駄になる」などの反対意見も根強かった。

 住民の臨時総会でデジタル改修が承認されたのは、今年2月になってから。3社から見積もりを取り、工事費を5300万円に抑えたが、1戸当たりの負担は約3万7000円に上った。鈴木英彦理事長(70)は「メリットに比べれば、負担が重すぎる」と嘆く。

 一方、マンションなどの場合、別の“対策”が必要になるケースもある。

 さいたま市のあるマンションでは、周辺に電波障害を引き起こしているため、マンションで受信した電波を周辺の一戸建てなど約40世帯に有線で再送信する設備を置いている。経費は年間約50万円。が、地デジは弱い電波でも受信さえすれば鮮明に映るため、この設備は不要になる。

 そこで、マンション側では40世帯すべてに地デジを直接受信するよう求めることにした。しかし、新しくアンテナを立てると、一戸当たり数万円はかかる。8月に住民説明会を開くが、管理組合の事務局長(63)は「被害感情のある住民に納得してもらえるか、不安だ」とこぼす。

 総務省によると、共聴施設を利用する集合住宅(4階建て以上)で暮らしているのは全国で770万世帯。長谷工総合研究所の山本理(まこと)所長は「理事長のなり手がいなかったり、資金力に欠け行動できなかったりなど、管理組合が機能していない所もたくさんある」と指摘する。管理組合が機能しないと、地デジ改修費用の負担をめぐり、住民間でトラブルが起きることも予想される。

 日本CATV技術協会の調査によると、3月時点で約3割の集合住宅では地デジ改修の検討すら始まっていない。全国マンション管理組合連合会の穐山(あきやま)精吾会長は「このまま2011年7月にアナログ放送が終了すれば、テレビが見られなくなる家が相当出てくるのでは」と心配する。

http://www.yomiuri.co.jp/net/feature/20080725nt0d.htm