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2008年07月24日(木) 12時07分

振り込め詐欺犯罪の抑止力になるか?写真公開ツカサネット新聞

千葉県警捜査二課で、振り込め詐欺で現金を引き出す男たちの顔を写真公開した。

これは全国初の試みで、同課によると「高齢者の被害が多く、自殺に追い込まれる人までいることや、普通の若者がアルバイト感覚で犯行に加わったりする現状に警鐘を鳴らしたい」ということだ。

正直言ってニュースやバラエティ番組で、一昨年位前から、この件に関する報道がしつこく報道されていたにも関わらずようやくかよ、という感じがするが、とりあえず「誰かがやらなきゃ他が動かない」というのが日本人の気質だから、遅い動きとはいえ、この試みを行った事は評価すべきだろうと思っている。

犯罪に対する厳罰化は『加害者の人権を守る』とか『加害者の社会復帰の妨げになる』とか様々な形で異論もあるだろうが、『起こした後で罰を加える』とか『矯正させる』といった『出口型方式』よりも、このような形で犯罪を未然に防ぐ『入り口型方式』のほうが、モラルが急速に崩壊しつつある現状から考えれば効果があるような気がする。


幕末の頃の話だが、日本にやってきた外国人が、その日本旅行記の中(確か英国公使の秘書官、アーネスト・サトウの著書だったように思うが)で、日本の治安のよさに触れた話がある。

当時の日本民家は、その気候から開放的な構造なのだろうが、誰も外出の際に鍵をかけるものがいない。この国には泥棒というものがいないのだろうか。また人々はとても礼儀正しく、お隣の中国とはえらい違いだ。というようなことが記されていたが、もちろんそれは厳しい法律があったからこそ守られたものだ。

日本は江戸時代に入る前に『戦国時代』というものがあった。それは秀吉のように才覚次第で天下人になれる時代で、ある意味、今以上に個人主義・実力主義の時代だったわけだ。当然、モラルや秩序にはこだわっていられない一面がある。主君や敵の奥さんが美人なら奪う、主君を追い出すか殺す、その子供や親類縁者一同も皆殺しだ。トップがそうなら下っ端の足軽だって同じ事を一般人に行おうとする。

そこで天下を統一した信長が、その天下を維持するために、まずは秩序回復を目指そうとする。しかし崩壊した秩序やモラルを回復するには、徐々に段階を置いて、などと暢気なことはいっていられない。一気に回復するしかない。それが『法律の厳格化』になっていく。

信長の場合、有名なエピソードとして、部下の足軽がちょっと女性をからかったのを見ただけでも、その首を刎ねたそうだが、同様な政策は秀吉、家康にも受け継がれ、江戸幕府では窃盗でも『十両(現在の60万円くらいか)盗めば、首が飛ぶ』というくらいの厳しい法律が定められ、場合によっては家族も連帯責任を取らされる『連坐制』。さらに死刑の場合は『磔獄門』という誰もが見ることのできる公開刑まで行う。我が家にも幕末の頃の写真集があり、その姿を記録したものがあるが、その様は非常に惨たらしい。

これらの相乗効果が『犯罪の抑止力』となり、人々の意識に刷り込まれ、それが習慣化して、幕末、外国人が驚嘆したほどの『秩序と礼儀の正しい国』になったのだろう。

無論、今の私達の社会でこんな磔獄門のような刑をすべきではない。ただ日本人は未だに『恥』を知る(というか妙にこだわる)民族だ。だからこそ社会保険庁で公金横領や怠慢をした職員の顔や名前を未だに出せない(あるいは圧力で出さない)し、大分県の教育委員会汚職事件で口利きの県会議員の名前がなかなか出てこないのも、その表れの一端だろう(彼らの場合は名前に傷がつくのを非常に恐れる、という臆病者の側面もあるが)。

今の若者にそこまで『恥を知る』意識があるかどうかは分からないが、少なくとも、将来の事を考えれば、多少なりとも犯罪の世界に足を突っ込むのをためらわせる効果があるのかもしれない。

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(記者:ちょろず)

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