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2008年07月24日(木) 11時57分

【東北地震】先祖代々の墓崩れ、宿泊施設はキャンセル 土用丑の日にも影響 産経新聞

 「ドーンと音がした。強烈な揺れだった」。岩手・宮城内陸地震から1カ月余り。震災の傷跡が癒えない東北地方を24日深夜、震度6強の大きな揺れが襲った。地震から一夜明け、住民らは早朝から被害確認に追われた。震度6強を記録した岩手県洋野(ひろの)町では町職員らが地震発生直後から役場に集まり情報を収集した。今のところ犠牲者が出ていないが、同役場を訪問した泉信也防災担当相は「被災の状況はこれから入ってくるだろう。被災者が1日も早く立ち直れるよう祈っている」と話した。
 洋野町の東長寺では多くの墓石が倒壊。「今までこんなことはなかった。自分の代で墓が崩れてしまうなんて」。早朝から檀家が集まり、崩れた石を片づけていた。
 高齢者を中心に57人が入院していた洋野町の種市病院では、地震発生と同時に当直も合わせて医師・看護師ら約20人が集まった。患者のけがの有無や心電計などの医療機器の点検に追われた。人工呼吸器をつけた患者が1人いたが、停電もなく、無事作動し体調に変化はなかったという。 
 宿泊や入浴ができる総合交流施設「アグリパークおおさわ」では、女湯の窓ガラスが割れたり、厨房(ちゅうぼう)の食器が壊れた。支配人の久保田唯さん(29)は「休憩しようとしたらドーンという音がして縦と横に揺れた」。
 同施設では早速、宴会や宿泊の予約キャンセルの電話が入り始めた。従業員は「被害が明らかになるにつれてキャンセルはさらに増えるかもしれない」と顔を曇らせた。
 「おおた食堂」では、土用の丑(うし)の日でうな重の注文がたくさん来ていたが、すぐには営業を再開できないという。店主の太田典克さん(41)は「器も多く壊れて昼の注文は無理」と途方に暮れた。
 震度6弱を記録し、37人の重軽傷者が出た青森県八戸市。自宅2階で寝ていた主婦(41)は「ゆらゆら揺れ始めたので起きた。収まるのだろうと思っていたら、立っていられないぐらいに強くなり、子供を脇に抱えた。置物が落ち、ワインのボトルが割れた」。すし店の男性(46)は「酒のボトルが30本ぐらい落ちて割れた。冷蔵庫は10センチぐらい横にずれていた」と後かたづけに追われた。
 市内の「村重旅館」では、4人いた宿泊客にけがなどはなかったが、部屋の壁に亀裂が入った。「柏木旅館」でも中2階の広間にある床の間の壁が崩壊した。
 同市では、市役所に隣接する2階建ての市公会堂や国の文化財なども被害にあった。
 公会堂は約1600の客席の天井裏にある消火設備の配管が破損し、漏水。客席の一部や機械室などが水浸しになり、ロビーや入口付近の天井の内壁もはがれ落ちた。市防災安全推進室の担当者は「こんな被害は今まででも例がない」。
 明治30年ごろに建てられた国の登録有形文化財指定の集会所施設「更上閣」にも天井や壁の一部がはがれ落ちるといった被害があったという。

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