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2008年07月24日(木) 10時59分

【東北地震】太平洋プレート内部で発生 キラーパルス弱く建物被害少ない?産経新聞

 東北地方の太平洋側では、東から西に移動している太平洋プレート(岩板)が陸のプレート(北米プレート)の下に沈み込んでいる。今回は、太平洋プレートの内部で起きた地震とみられ、2つのプレートの境界で発生する海溝型地震とはメカニズムが異なる。

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 東北大学の海野徳仁教授によると、太平洋プレートの内部で起こる深い地震は、上下の2層構造になっており、今回は下の層で発生したため、震源が108キロという深さだった。上層と下層では地震のメカニズムも異なり、上面側では断層面に圧縮力が働く「逆断層型」、下面では断層面が引き離されように力が働く「正断層型」の地震が起こることが知られ、今回の地震は正断層型だった。
 東大地震研究所の大木聖子助教によると、太平洋プレート内部の地震の2層構造は「2重深発地震面」と呼ばれ、プレートの上面側に厚さ約30キロの層があるという。
 東北地方で近年に起きた太平洋プレート内部の地震としては、平成15年5月に宮城県・気仙沼沖で発生したマグニチュード(M)7.1の地震や、今回とほぼ同じ場所でおきたM6.6の地震があるが、これらは震源の深さが約70キロで今回より30キロほど浅く、太平洋プレート内の上層で起きた逆断層型だった。
 海野教授によると、太平洋プレートの下面側ではマグニチュード(M)6級までの地震は観測されるが、M7に近い規模は極めてまれだという。一般に震源が深いほど、余震の回数は少ないとされる。
 今回の地震は、岩手、青森県を中心に広い範囲で強い揺れが観測された。これは、震源が深いために地表での距離が離れていても震源からの距離の差が小さいためで、震源の深い地震の特徴の一つだ。
 防災科学技術研究所の松村正三研究参事によると、地震の揺れが太平洋プレート沿いに南北方向に伝わった結果、北海道から東北、関東にかけての広い範囲で強い揺れが観測されたという。松村参事は「東北地方の太平洋側で昨年の1年間はM5以上の地震ないという奇妙な状態が続いていた。今年に入ってM6クラスの地震が相次ぎ、帳尻を合わせているような印象だ」と話している。
 東大総合防災研究情報センターの古村孝志教授らが、震源に近い岩手県の玉山、九戸、岩泉の3地点で観測された地震波を解析した結果、周期が0.1〜0.2秒の短周期地震動を多く含んでいることが分かった。木造家屋の被害に強く影響するのは、周期が1〜2秒の「キラーパルス」と呼ばれる地震波。6月の岩手・宮城内陸地震と今回の地震では震源の深さもメカニズムも異なるが、いずれもキラーパルスが弱く、地震の規模や震度のわりには家屋倒壊などの建物被害は小さかった。

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