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2008年07月23日(水) 16時13分

八王子通り魔 犠牲者・斉木さん、ゼミの人気者 就職内定、夢断たれ産経新聞

 「なぜ、あの子が」。凶刃の犠牲となった中央大文学部4年、斉木愛(まな)さん(22)はしっかりした性格で、アルバイト先の書店でも大学のゼミでも頼られる存在だった。東京都八王子市の書店で女性2人が死傷した通り魔事件。惨劇の舞台となった書店の入り口は一夜明けた23日朝も閉じられたまま。通勤客らが不安そうな表情で足を止めていた。

 斉木さんは宇都宮市出身で、進学校として知られる県立宇都宮中央女子高を卒業後、中央大に進学。西洋史学を専攻し、主にヨーロッパ中世史を学んでいた。来春に卒業を控え、専攻責任者の見市(みいち)雅俊教授(61)は「ゼミでは15人くらいが学んでいたが、斉木さんはまとめ役の一人でもあった。こんなことになるなんて…」と言葉を詰まらせた。

 大学側は報道で事件を知り、斉木さんの家族と連絡を取ったが、母親は大学側の気遣いに感謝を述べるなど取り乱した様子をみせず、気丈に振る舞っていたという。

 「まじめできちんとした子だった。ショックです」。斉木さんが住んでいたアパートの管理人の女性は、インターホン越しに疲れ切った声で話した。

 女性によると、斉木さんは音楽が好きで、イヤホンを着け、さっそうと歩いている姿が印象的だった。女性は「就職の内定もひとつ出ていたのに」と声を詰まらせた。

 斉木さんの下の階に住む女性会社員(41)は「元気がよく、髪が短いボーイッシュな感じの子。アウトドア派だった」。昨年、一緒に食事をした際には「音楽が好き。ロックを聴く」と話していたという。

 宇都宮市内の住宅街にある斉木さんの実家はカーテンが閉められ、ひっそりとしていた。向かいに住む男性は「愛ちゃんは優しい子で、みんなに慕われていた」とショックを隠しきれない様子。子供が幼なじみで、斉木さんが弾くピアノの調べが流れてきていたという。

 一方、斉木さんが勤めていた書店関係者によると、斉木さんは2年くらい前からアルバイトとして働き始め、店舗ではキャリアの長い「頼れる存在」だった。書店が入居するビルの入り口には臨時休業を知らせる紙が張り出され、周辺には立ち入りを禁じる警察の黄色のテープ。通勤客らが通り過ぎる中、警視庁の捜査員だけが慌ただしく出入りしていた。

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