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2008年07月23日(水) 00時21分

八王子殺傷 「通り魔だ」…身勝手な凶行に買い物客青ざめ毎日新聞

 ショッピングセンターに響く悲鳴。「通り魔だ」と叫ぶ声−−。無差別の刃物がまた、市民を襲った。京王八王子駅ビルのショッピングセンターで22日夜起きた刺殺事件。「仕事がうまくいかず、むしゃくしゃしてやった。無差別に人を殺そうと思った」。身勝手な男の凶行に、買い物客らは青ざめた。【川崎桂吾、奥野敦史、内橋寿明】

 事件は、午後10時の閉店間際だった9階の書店で起きた。8階にある雑貨店の男性店長(43)は9時半ごろ、上階から「きゃー」という女性の悲鳴を聞いた。8階は既に閉店し、エスカレーターも停止していたため、非常階段を駆け上がると、9階書店の棚と棚の間にエプロンを付けた女性が倒れていた。

 女性は胸に傷を負い、床一面には血が流れていた。店長は書店スタッフとともに女性の手当を手伝い、「しっかりしろ」などと呼びかけたという。店長は「他の店の人たちと『最近は秋葉原みたいな事件が多いから気を付けよう』と話をしていたところ。まさかこんなことが起こるとは」と声を詰まらせた。

 ショッピングセンター10階のお好み焼き店店長の男性は「午後9時半ごろ、ビルの警備員から『通り魔が出た』との電話がかかってきた」という。ちょうど最後の客2人が店を出ようとしていたので、「エレベーターで直接1階に降りてください」と危険に遭わないよう送り出した。「10階には悲鳴は聞こえなかった。警備からの電話がなかったら、事件に気付かず、お客さんをそのまま送り出したかもしれない」と声を震わせた。

 ショッピングセンターの前で友人と待ち合わせをしていた八王子市の男子学生(20)は「すごい人だかりであちこちから『通り魔』と叫び声が聞こえた。次々に警官がビルの中に入り、数分後に髪の長い女性が担架で運ばれてきた。体に毛布をかけられて心臓マッサージを受けていた。その後、エプロン姿でズボンが血まみれになった書店の店員らしき女性が両肩を抱えられ、泣きながら警察車両に乗り込んでいった」と驚いた様子で話していた。

 ◇共感し誘発の恐れ

 ▽作田明・聖学院大客員教授(犯罪心理学)の話 99年に東京・池袋、山口県下関市で通り魔事件が連続したように、この種の事件は連鎖しやすい。今年も無差別殺人事件が続発しているが、追い詰められて同じような境遇にいる人が事件を知って、共感し誘発されてしまう恐れがある。雇用問題など若い人が今置かれている厳しい状況を改善していくしかない。

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