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2008年07月19日(土) 08時02分

【Re:社会部】「法の正義」って…産経新聞

 平成16年に茨城県土浦市で父と母、姉の3人を殺害した長男の判決が今年6月にありました。包丁と金づちで執拗に殺害した凄惨(せいさん)な犯行に、検察側は死刑を求刑していましたが、判決は無罪。精神鑑定の結果から、犯行時は「心神喪失」の状態で善悪の判断ができなかったというのが理由でした。

 最高裁は4月、精神鑑定について「合理的な理由がない限り十分尊重すべきだ」との初判断を示しており、これに従った判決とみられます。が、最高裁判断後にあった渋谷夫バラバラ殺害事件の判決では、「心神喪失」という鑑定結果に縛られず、裁判所が「完全責任能力があった」と認定するなど判断が分かれているのが現状です。

 殺害された姉は1歳に満たない乳児と帰省している間に事件に巻き込まれました。長男は命ごいする姉と母を殺害後、自宅の中をハイハイしていた乳児を物置として使用していた和室に入れて戸を閉め、帰宅した父を殺害しました。

 幼い乳児だけを「助けた」のであれば、人間性のかけらを見いだして幾分救われますが、判決で認めた心神喪失状態では「助けた」わけではなかったのかと思うとやるせなくなります。

 無罪は無実とは異なります。乳児が分別つく年齢になったとき、司法制度や社会のルールをどう考えるのでしょうか。ときに「法の正義」が分からなくなります。(敬)

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