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2008年07月18日(金) 14時45分

「なりすましメール」でいじめ急増…取り締まり難しく読売新聞

 他人の携帯アドレスや名前を偽装する「なりすましメール」を悪用したいじめが、中高生の間で急速に広まっている。

 クラス全員から悪口のメールを送られたと思い込み、不登校になる子どもも出ているが、アドレスを偽装する行為自体は違法とはいえず、取り締まりが難しいという。

 今年に入って既に約300件の相談を受けた「全国webカウンセリング協議会」(東京都)では、「人間不信に陥る前に、まず窓口に相談を」と呼びかけている。

 送信元アドレスの偽装は、「匿名メール」などと呼ばれる携帯サイトに接続し、表示したいアドレスを打ち込めば簡単な操作で可能だ。受信者の携帯画面上には偽装アドレスだけが表示され、本当の送信者のアドレスは表示されない。

 一部の悪質業者がスパムメール(迷惑メール)の送信元偽装に利用していたとされるが、この手法が1年ほど前から、子どもたちの間で流行し始めた。

 同協議会に寄せられたメール絡みの相談件数は、昨年4月までは1か月に0〜2件だったのが、昨夏以降、急に増え始め、今年4月には89件、5月は76件に達した。その大半が、なりすましメールだという。

 東京都内の中学生は、突然、クラス全員のアドレスで「うざい」「死ね」などといった内容のメールを受け取り、以来、学校に登校できなくなった。学校が調査したが、送信した生徒は見つからず、連絡網代わりにクラスで公開しているメールアドレスが悪用されたなりすましメールと判断。しかし、誰のいたずらだったのかは、とうとう分からなかったという。

 また、埼玉県内の高校では、同じクラスで交際している男女にそれぞれ「もう絶交」「すぐ私のアドレスを消して」とのメールが届いた。2人はケンカ別れしたが、その後、交際を快く思わない友人によるなりすましメールだったと分かった。

 なりすましメールの中には、発信者を偽装したメールを最大1万件まで発信できる「メールボム」や、携帯サイト上で無料で取得できる「サブアドレス」を悪用したものも。サブアドレスの場合、1人で複数のサブアドレスを取得できるため、いじめのたびに使い捨てにするケースも報告されている。誰から送られてきたメールか分からないまま、クラスメートしか知らないはずの話題を織り交ぜながら悪口を書かれ、精神的に追いつめられるケースもあるという。

 捜査関係者によると、国内では虚偽のアドレスを使って送信する行為を規制する法律はない。仮に相手を中傷する内容のメールだとしても、掲示板のように誰もが見られる状態ではないため、刑法上の名誉棄損にもあたりにくいという。

 ◆設定で防止可能◆

 なりすましメールは、端末の設定を変えるだけで防ぐことができる。NTTドコモは「受信拒否」の設定を「弱」に、auは「フィルターレベル」を「低」にする。ソフトバンクの場合は、「オリジナルメール設定」で受信しない設定にできるという。

 同協議会の安川雅史理事長は「全員が受信拒否すればなりすましメールを送る人はいなくなる。学校も親もまず設定方法を覚え、子どもたちに教えて欲しい」と話している。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080718-OYT1T00467.htm