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2008年07月18日(金) 00時00分

ワンクリック詐欺が再び急増読売新聞

 ワンクリック詐欺が急激に増えている。昨年11月の業者の逮捕により一時的に減ったものの、再び急増し6月の相談件数は史上最高の数字となった。パソコンのボーナス商戦・夏休みを狙って、詐欺グループがだましサイトを大量生産しているようだ。(テクニカルライター・三上洋)

IPAのワンクリック詐欺相談件数が過去最高に

 下のグラフは、IPA・情報処理推進機構でのワンクリック不正請求相談件数の推移だ。昨年の12月から今年の2月にかけては、不正請求の相談が大幅に減っていた。しかし3月ごろから急増し、今年6月には372件で過去最多となっている。詐欺被害が減って安心していたのに、この数か月でひっくり返されてワンクリック不正請求が急増している。


IPA・情報処理推進機構による、ワンクリック不正請求の相談件数。昨年12月から2月までは減っていたが、3月以降急増して、6月には史上最多となった

 この背景には、2007年11月に起きたワンクリック詐欺グループの逮捕がある。2007年11月に、ワンクリック不正請求の詐欺グループが銀行口座を巡るトラブルなどで逮捕された。この逮捕によって、他の詐欺グループは一時的に活動をやめたようだ。それが相談件数のグラフにもハッキリ現れており、ワンクリック不正請求は目に見えて少なくなっていた。

 しかし詐欺グループは、ほとぼりがさめるのを待っていたかのように3月頃から活動を再開している。2008年3月以降、ワンクリック不正請求の被害が続発し、IPAへの相談件数も増えている。IPAによれば「逮捕直後は活動をやめていたようだが、詐欺サイトは普通のサイトとして残っていた。3月ごろから、それらのサイトでの詐欺行為を再開したようだ」とのこと。逮捕の効果も3か月しかもたなかったことになる。

6月〜8月はワンクリック詐欺が急増する季節

ワンクリック詐欺サイトの例。黒の部分でこちらの情報を分析しているように見せかけている。脅しの手口に過ぎず、実際には個人情報はわからない

 ワンクリック不正請求が6月に急増した理由がもう一つある。それはパソコンのボーナス商戦だ。ボーナス時期にはパソコンの売り上げが伸びるが、同時に初めてパソコンを使うユーザーも増える。IPAによれば「ボーナス時期にパソコンを買った新規ユーザーの方が、色々なサイトを見てみようとインターネットに夢中になる。その時にワンクリック不正請求などの詐欺サイトにだまされやすい」とのこと。毎年この時期は、ワンクリック不正請求の相談が増える傾向にあるそうだ。詐欺グループもこの時期を狙っている節がある。

 夏休みも要注意だ。学生や子供も夏休み期間中にインターネットを使うから、面白半分で色々なサイトを見て、詐欺サイトにだまされる可能性がある。

 国民生活センターによれば「最近の傾向として、無料サイトを利用した詐欺が増えている。無料だと思い込ませて後で不正に高い料金を請求する例が目立つ」とのこと。学生や子供はお金がないこともあって、無料サイトを探して使うことが多い。そのため無料サイトに見せかけた詐欺サイトにだまされやすい。自分の子供には、危険性をしっかりと教え込んだほうがいいだろう。

アクセスしただけでは住所・氏名はわからない

 この画像は、今も活動しているワンクリック詐欺サイトの例だ。アダルト動画サイトを装った詐欺サイトで、動画を見ようとするとこのような請求画面になる。黒の部分には「接続元確認」「アクセス確認」「LOGIN」などの表示があって、あたかもこちらの情報を分析しているかのように見せている。しかしすべて見せかけであり、脅しのためのニセ画面なのでダマされてはいけない。

 サイト側でわかる情報は、こちらのIPアドレスやブラウザの種類といった限られた情報のみ。IPアドレスはインターネット上の住所にあたるものだが、プロバイダ名がわかるだけで個人名や住所まで調べられることはない。実際に個人情報をつかまれることはないのだ。

 詐欺サイトは様々な手法を使っている。ワンクリック詐欺だけではなく、ツークリック詐欺、架空請求、無料サイト商法などの手口もある。「ワンクリックではないから不正請求ではない」「規約を表示したから詐欺ではない」と主張するサイトもあるが、これもすべて嘘。後から不当な料金を請求するのは同じだから、いずれにしても不正請求であり詐欺だ。

 対策は簡単で「すべて無視」すること。すべて脅しなので、一切相手にしないことが大切だ。もっともダメな処置は、お金を払ってしまうこと。お金を払えば脅しや請求表示が消えるだろうと思って、お金を払ってしまう人がいる。しかしお金を払うと、犯人側に「ダマされやすいカモ」だと思われて、何度も詐欺の被害にあうことになる。IPAでは「お金を払うことは詐欺業者を助けることになる。そのお金で、犯人はさらに多くの詐欺を繰り返す。だから絶対に払ってはいけない」と呼びかけている。

 夏休み期間中に子供がだまされないように、パソコン・ケータイでの詐欺対策を子供と話し合っておきたい。また高齢者をターゲットにした詐欺も増えているので警戒が必要だ。

http://www.yomiuri.co.jp/net/security/goshinjyutsu/20080718nt0c.htm