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2008年07月17日(木) 20時31分

教育者に問いたい反面教師力オーマイニュース

 広辞苑によると、反面教師とは、見習ってはならない悪い見本、とある。

 日本漢字能力検定協会が公募した、2007年の世相を表す漢字の第1位は「偽」だが、あまりに核心を貫く言葉ゆえ、いまだに記憶に新しい。

 この漢字が物語るように、昨年は、食品の賞味期限の改竄や産地、原材料などの偽装表示、さらには年金記録の消失問題や耐震強度偽装事件など、国民の信頼を裏切る様々な問題、事件が続発した年でもあった。

 それでも、この種の事件が発覚しても、前述の「反面教師」が正常に作動さえすれば、これから発現する自浄力により、同種犯罪の再発防止や抑止に、それ相応の効果を発揮しよう。

 その効果とは具体的には、この種の犯罪を摘発された当事者に対してはもちろん、不正に手を染めているものの辛うじて露見していない、わが身に覚えがある人々に対しても、不正行為から手を引く千載一隅の機会となることだ。それまでの不正が免罪されるわけではもちろんないが、社会にとっては、悪行が継続されるよりは利益になる。

 加えて、正規の商行為をしている業者にも、ひとたび同業者の不正が発覚すれば、世間は「どうぜあそこも似たりよったりだろう」と同業者に対し、厳しい視線を寄せる。したがって「反面教師」が作動するか否かは、その後の経営の成否を左右しかねず、おのずと不正行為に対する抑止力になる可能性は高い。

 ただ現実は、このようにうまくコトは進まない。

 残念ながら今年も世間を欺く様々な偽装事件が起きている。船場吉兆の料理の使いまわし、飛騨牛を偽装した食肉の丸明、中国産うなぎを国産と偽った魚秀などなど…….
このままのペースでいくと、今年の世相漢字も昨年に続き「偽」の字になりかねない。

 どう見ても、反面教師は正常に作動しているとは言い難い。

 とりわけ、最近発覚した、大分県の教員採用にまつわる汚職事件は、事件の中枢にいたのが「教育関係者」だけに、その反面教師の機能不全ぶりがあらわになった。

 これまでも教員採用にまつわる不正事件は、頻度こそ少ないものの全国各地で散発的に起きてきた。それでも、全国的にこの種の事件が拡大しなかったのは、全国の自治体が、これらの事件に対する「反面教師機能」が正常に作動していた結果だと思っていた。

 今回の大分の事件で、反面教師には、正常に作動するものと、逆に作動するものとの二種類あることが分かった。

 前者は、過去に起きた教員採用を巡る不正事件を鏡として、採用試験の点数公表などの透明化や、試験事務の外部委託化など、不正が起き難いシステムを構築しようとする、本来この機能が持つ真っ当なもの。

 一方、後者は、過去の事件の摘発された原因に着目し、不正が外部に露見しないようなシステムを作り上げるために、この反面教師機能を生かすのだ。

 つまり、反面教師が再発防止のために使われる前者に対し、後者の場合、これを不正を続けるために使うことになる。

 要するに、前者では、不正行為自体が悪い見本であるのに対し、後者は、露見することが悪い見本ということになる。

 常識的に考えれば、前者が、この機能の正しい姿であることは、論を待たないが、今回の場合、その機能を不正が露見しないように使ったから、始末が悪い。

 しかも、学習力にかけては他の追随を許さない教育者や教育関係者が、である。

 逮捕者5人を出して蜂の巣をつついたような騒ぎとなった大分の教員採用汚職事件だが、さすがの小矢文則教育長も、「組織ぐるみと言われても反論できない」(7月11日付読売新聞)と会見で、組織的不正を暗に認める発言をせざるを得ない状況に追い込まれた。

 大分県教委は、持ち前のはずの反面教師力をどのような形で表してくれるのだろうか。

(記者:藤原 文隆)

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