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2008年07月17日(木) 14時42分

あなたの隣は大丈夫?〜ゴミマンションが増えている〜ツカサネット新聞

私の友人で都内で便利屋をやっている人間がいる。話し相手から買い物の代行、部屋の掃除といった事まで何でもやる商売だが、ここ2〜3年、特に多いのが「部屋のゴミを片付けてほしい」という依頼だ。

私も昨年、東京に用事があったので、そのついでに仕事を手伝った事があるが、その部屋の惨状はすさまじかった。部屋のあちこちに本や雑誌、衣服、DM、ペットボトルや空き缶、コンビニのビニール袋、弁当の空容器がちらばり、その一隅に寝るための空間を確保しているという状態だ。

マスコミなどでよく話題に上がるのは「ゴミ屋敷」だが、ゴミ屋敷との根本的な違いは主の年齢だ。ゴミ屋敷の場合、テレビで報道される場合に限っては、その主はご近所とのコミュニケーションに多少問題のある中〜高年層が中心のようだだが、ゴミマンションの場合は比較的年齢の若い女性や男性が中心で、私が遭遇したそのゴミ屋敷の主もごく普通の女性だ。

こういったケースは『片付けられない女たち』という書籍などでも紹介されていて、一つにはADDやADHD(注意欠陥障害)という発達障害によるものと言われている。ただし、これについてはこの発見をしたアメリカでも現在、その障害や症状に関しての論争が盛んなので、ここでは読者に妙な誤解や偏見が生じるのを避けるため、この話は置いて考察してみたい。

また具体的に「どれだけ増加しているか」ということも、そういった調査データがないため(あるいは以下を読めば理解いただけるだろうが、建物の構造や個人のプライバシーがあるため調査しようがない)、断定はできないが、その便利屋の友人の話や他の便利屋のホームページからの話、あるいは現在の東京への人口集中を考慮していくと、まず減っているとか、横ばいということはありえないと想定している。

ある便利屋さんのホームページを参考にすると、その主な原因は、

◆ワンルームマンションの増加
◆ご近所づきあいの減少
◆ゴミの分別の複雑化
◆夜間労働者の増加
◆核家族化(単身世帯の増加)
◆コンビニ食材による中食産業の消費量の増加

によるとされている。なぜワンルームマンションの増加が挙げられるのかというと、最近のマンションは冷暖房完備のため窓は閉めっぱなしでよく、「外から見えにくい」という構造がある。家賃だって銀行振り込みでいいから、延滞しない限り、大家さんや管理人がその場所を訪れる必要がない。つまり『住まいの構造』そのものが『ゴミをためやすい』構造になっているわけだ。

2番目の『ご近所づきあいの減少』と5番目の『核家族化』というのも、よく理解できる。都内のアパートやワンルームマンションに住んでいるのは、ほとんどが進学や就職で単身上京してきた人たちだ。自分のプライベートを侵害されたくないことに加え、最近の治安悪化や近所づきあいのトラブルを避けるために『隣のことは見て見ぬふり』という状態になるからだ。

3番目の『ゴミ分別の複雑化』。これが最も事態を複雑にしている原因のように思える。ゴミの分別というと単純に『燃えるゴミ』、『燃えないゴミ』、『資源ゴミ』という分け方だけでなく、地域や自治体によって、その区分が微妙に違うケースがある。例えば世田谷区の場合のゴミの分別方法を見てみると…

●可燃ごみ/生ごみ(水切りをして出す)、少量の植木の枝や葉(50センチ以下に切り、束ねて出す。大量に出す場合は有料)、紙くず(資源回収に出せないもの)、衣類(ストッキングなど化学繊維を含む。皮革製品は不燃ごみ)、紙おむつなど(汚物は取り除き、トイレに流す)
●不燃ごみ/ビニール、プラスチック類(食品包装用ラップなど)、びん以外のガラス製品、割れたびんなど(厚紙などに包み「割れ物」などと表示)、スプレー缶・卓上ガスボンベ・ライター(必ず、最後まで出し切ってから出す)、ゴム製品、皮革製品、金属・陶磁器類、乾電池(ボタン式乾電池、充電式乾電池は販売店に返品)、蛍光管・電球(ケースに入れて出す)、小型の家電製品(ドライヤー、アイロンなど、30cm角以内のもの)
だが、お隣の杉並区の場合では、
●可燃ごみ/台所のごみ、衛生用品、衣類、食用油、リサイクルできない紙くず(包装紙、紙袋、お菓子やティッシュの空き箱は可燃ごみではなく古紙)、プラスチック製品(ペットボトル、卵のパック、プリンのカップなどは、可燃ごみではなく資源ゴミ扱い)、せん定した枝・落ち葉等(せん定した枝は、長さ50センチ以内、枝の直径10センチ以内、束の直径30センチ以内に束ねる)、ゴム製品類、皮革製品類、汚れの取れないプラスチック製容器包装、その他(保冷剤、粘土など)
●不燃ごみ/金属、ガラス、陶磁器、小型の家電製品、電球・蛍光管、乾電池、傘、アルミ箔・アルミホイル、スプレー缶・カセットコンロ用ボンベ・ガスライター、その他
(カイロ、乾燥剤)
となっている。大よそは同じだが、例えば「皮革製品」や「ゴム製品」などは一方では不燃、一方では可燃というふうになっている。ちなみに地方都市の仙台の場合を調べてみると、可燃・不燃という分け方ではなく、「家庭ごみ(包丁や傘ガラス類も含む)」、「プラスチック製容器包装」、「缶、ビン、ペットボトル、廃乾電池」、「紙類」という出し方になっている。

そこで世田谷区から杉並区に引っ越しただけでも、そんな些細な部分の違いがあるため、まじめな人ほどとまどうことになる。まして地方から上京した人にとっては、先ほどの仙台市がいい例だが、故郷とは全然違うゴミの分別方法を一から覚えなくてはならない。また同じ区内で引っ越したとしても、地域によって収集日が違うこともあるので、「ゴミ出しのタイミング」で混乱し、やる気を失うことも多くなるだろう(ちなみに各区によってホームページの内容表記や表現方法に違いがあるのも「分かりにくい」原因だろう)。

また、ある地方自治体の場合では「指定の場所で配布されるゴミ袋を使って出す」という規定があるそうだが、その場所が午後7時に終わってしまうため、夜間に仕事をする人、母子家庭で残業などで少しでも生活費を稼ごうという人にとっては、そのゴミ袋を取りに行けないケースも多く、結果的に家の中にため込んでしまうケースもあるようだ。

次に「夜間労働者の増加」だ。私が体験したゴミ屋敷の主の場合はキャバクラでバイトしていたようだ。しかし彼女はこのバイトと並行しながら専門学校で建築を学んでいた。そこから窺えるのは「少しでも高額のバイトでお金を稼ぐことで、故郷の家族に経済面で迷惑をかけたくない」という優しさの表れのように感じた。

都内でそのような形で勉学に励む学生。あるいは昼の仕事だけでは食べていけず、夜の仕事を掛け持ちする人も多いだろう。そして、へとへとになって帰ってくるのは朝方だ。当然、すぐ寝床に入りたいことだろう。そして起きてみるとゴミ収集時間はとっくに過ぎている。だからといって朝方に帰ってすぐにゴミの分別を始めようものなら、隣人はまだぐっすり眠っているから、あまり大きな音が立てられない。料理にしても同様なので、どうしても手軽さからコンビニのお弁当に手を出さざるを得なくなるといったことが想定される。

ちなみにこの「ゴミマンションの片づけ」料金だが、私の知り合いの場合、作業料金は1時間1人3000円。その時は3人で8時間行ったので、3人×8時間×3000円=72000円。これにお客様のところまでの交通費+ゴミ袋代という形になる。場合によっては、そのゴミをすぐゴミ処理場に持って行かなければならないケースもあるため、レンタカー屋でトラックを調達し、ゴミ処理場への処分費が加算され10万円以上になるケースもある。

それなら学校や職場の親しい友人にお願いして、ゴミの片づけを手伝ってもらえればいい気もするが、親しい人だからこそ『自分のだらしない部分を見せたくないし、変な噂になっても困る』という心理が働くから、やはり見ず知らずの便利屋がいちばんいいそうだ。

ゴミが増えればそこから害虫やネズミが発生し、その部屋が様々な病気の発生源になりかねない。またあまりにゴミが増えすぎると、築年数が古いアパートだと、そのゴミの重みで床が抜けてしまうこともあるそうだ。そうなれば、周囲への損害補償や修理代を想定すれば、10万円程度では済まなくなる。もし読者の方や友人にそのような状態の方がいるならば、早急に対策を立ててほしい。

また、今まで述べてきたように、行政のゴミ分別のややこしさや、経済状況の悪さがこの問題を生み出しているともいえる。まずはゴミの分別方法だけでも、日本全国で統一した基準づくりを行ったり、どの自治体のホームページを開いても表現方法が同じで、違いはどこかが明確に分かるような工夫をすれば、この問題も多少は改善できると思うのだが。





(記者:ちょろず)

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