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2008年07月16日(水) 23時19分

バスジャック 14歳少年「親にしかられ嫌がらせ」毎日新聞

 学級委員長を務める14歳の少年が高速バスを乗っ取ったのは「自分をしかった親への嫌がらせ」というあまりに幼い動機からだった。愛知県岡崎市の東名高速道路で16日起きたバスジャック事件。約1時間拘束された乗客たちは疲労をにじませ、少年が住む山口県宇部市の教育関係者には戸惑いが広がった。【福島祥、木村文彦、佐野裕、石原聖】

 「スピードを上げろ。止まるな」。落ち着いた声が車内に響いた。名古屋駅発東京駅行き高速バスが定刻の正午に名古屋駅を出発してから約1時間。愛知県豊田市の豊田インターに近づいたころ、少年がナイフをちらつかせ、男性運転手(39)に命じた。

 JR東海バス運輸営業部長の男性(41)はこの日、出張で偶然バスに乗り合わせ、1階運転席近くの座席に腰掛けていた。少年ら他の乗客10人は2階に乗車し、1階にいたのは男性だけ。そこへ突然、2階から降りてきた少年がナイフを手に運転手に近づいた。

 「110番通報してください」。男性は携帯電話で、少年に悟られないよう小声で本社に通報を頼んだ。その直後、少年は運転手に対し、乗客全員の携帯電話の電源を切らせるように指示。さらに乗客を1階に集め、電源を切った携帯電話を差し出させた。バスは午後0時57分、豊田停留場に停車する予定だったが、そのまま走り続けた。

 男性によると、少年は「ごく普通の中学生に見えた」といい、興奮した様子もなかった。乗客たちも落ち着いて少年の指示に従った。それでも、車内は緊張感に包まれた。

 午後1時半ごろ、バスは県警の誘導で美合(みあい)パーキングエリアへ。捜査員の説得が始まった。PA売店の女性従業員(50)は「まさか、身近でバスジャックが起きるなんて信じられない。警察が何を話しているか聞こえなかったが、緊迫感がここまで伝わってきた」と興奮気味に振り返った。

 午後1時56分、少年は捜査員の説得で乗客を解放、現行犯逮捕された。県警岡崎署に連行された少年は当初、動機について「彼女にふられたから」と答えていたが、その後「親にしかられた。親をめちゃめちゃにしたかった。世の中を騒がせたかった」と供述した。

 解放された乗客は岡崎署で事情聴取を受け、同6時半ごろ、タクシーに乗って同署を出た。全員疲れ切った様子だった。

 同社のバスジャック対応マニュアルでは、バスジャックがあった場合は異常を本社に知らせる外部連絡装置を作動させるよう規定。装置が作動すると、画面の三角印の色が赤色に変わり、会社側が異常を把握できるが、今回装置は作動しなかった。同社は「少年を刺激しないよう、運転手がボタンを押さなかったのでは」と話している。

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