記事登録
2008年07月16日(水) 00時00分

原油高銭湯を圧迫 入浴料20円値上げへ読売新聞

廃業決めた施設も
8月末で廃業する横浜市南区の銭湯「大和湯」(15日)

 住民らの憩いの場だった銭湯が8月末に県内から、また一つ消えることになった。県内の銭湯業界は、営業不振に原油価格高騰が追い打ちをかけ、存亡の危機に立たされている。現状を踏まえ、県公衆浴場入浴料金等協議会(会長・三浦敬横浜市立大教授)は16日、大人料金を20円値上げし全国最高額の450円にすることを求める答申をまとめ、松沢知事に提出する見通しだ。(河野越男)

 廃業する温泉銭湯「大和湯」(横浜市南区)は、横浜市営地下鉄吉野町駅の上にあり、築約60年にもなる宮造りの堂々とした建築で知られる。落語の公演を行うなど集客に努めたが、営業不振から建物を取り壊してマンションを建設する。経営者の長谷川満さん(79)は「利用者が減り続けたうえ、燃料の重油高騰も経営を圧迫した」と振り返った。

 県内の銭湯は現在、250軒。1975年の748軒をピークに減少の一途だ。家庭に風呂が普及し、経営難や後継者不足が深刻で、最近5年間で83軒が相次いで廃業している。このため、06年には現行の料金体系では経営継続が困難と判断して大人料金を400円から30円引き上げた。

 しかし、原油価格の高騰などの影響で、県公衆浴場業生活衛生同業組合の試算では、重油を使う横浜市内の銭湯は5年前に比べて334万円の出費増になり、運営費用も2倍に跳ね上がっていた。

 今回、同協議会が2年で再値上げを検討するのは、県内銭湯の4割弱が重油や廃油で湯を沸かしており、同組合から「燃料代高騰で経営が苦しく、値上げが必要だ」という要請を受けたためだ。東京都が6月に値上げした全国最高の大人料金450円に再び並ぶことになる。

 生き残りを模索する業界では重油からガスへの転換を図ったり、広い駐車場や多様な風呂を備えたりするところが出てきた。同組合の高橋清隆理事長は「高齢者や子どもたちを呼び入れ、少しでも銭湯という場にふれあう機会を増やしていきたい」と話している。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kanagawa/news/20080716-OYT8T00040.htm