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2008年07月15日(火) 00時00分

「通り魔」懲役10年  弁護側控訴を示唆読売新聞

被害女性の夫「軽い」と怒り

 川崎市宮前区で昨年4月、帰宅途中の女性会社員(当時40歳)が刺されて重傷を負った通り魔事件は14日、目撃者として名乗り出た後、逮捕され、殺人未遂罪に問われた住所不定、無職鈴木洋一被告(27)に懲役10年の実刑判決が言い渡された。閉廷後、被害女性の夫は「怒りは収まらない」と量刑への不満を漏らし、弁護側は被告の意向を確認した上で控訴することを示唆した。

 「懲役10年に処する」。髪を短く切り、白のポロシャツに濃紺のジャージーズボン姿で横浜地裁川崎支部の1号法廷に入った鈴木被告は、促されて証言台の前に立ち、加登屋健治裁判長が読み上げた判決主文を聞くと、やや視線を落としたように見えた。

 事件発生直後、鈴木被告は「犯人と格闘した目撃者」として宮前署に名乗り出た。この点について、加登屋裁判長は「事件から1時間20分しかたっておらず、現場の住民でもないのに、事件を具体的に供述したのは、事件にかかわっていたということ」と述べた。

 さらに、「被害女性の救護措置も取らず、ただちに帰宅しており、極めて不自然、不合理で、(目撃は)虚偽と断じざるを得ない」とし、判決理由の最後にも「捜査のかく乱を試みており、被害者をあざ笑うかのような行為」と断罪した。

 鈴木被告が初公判から一貫して供述を拒んでいることから、加登屋裁判長は判決で「犯行動機は不明」としながらも、「人の命を一顧だにしない卑劣なもので、酌量の余地は微塵(みじん)もない」とし、「犯行現場の近隣住民も猟奇的な犯行に震撼(しんかん)させられた」と、事件の衝撃の大きさを強調した。

 傍聴席最前列で判決を聞いた被害女性の夫(42)は主文を聞いてペンを握り締め、妻の心の傷や後遺症について朗読が及ぶと、眼鏡を外し、ハンカチで目頭をぬぐう一幕もあった。閉廷後、「怒りは収まらない。(判決は)短くて軽い」と話した。

 また、横浜地検の中井國緒次席検事は「量刑については、判決文を精査して検討したい」とコメント。一方、弁護側は「鈴木被告と近いうちに会って意向を聞くが、おそらく控訴することになると思う」と説明した。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kanagawa/news/20080715-OYT8T00263.htm