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2008年07月14日(月) 17時20分

チラシを実配の5割増しでとる山陽新聞の「偽装配達」MyNewsJapan

 2008年6月、新たに2件の「押し紙」裁判が提起され、ABC部数の不当なかさ上げによって紙面広告収入を増やしているばかりか、配達されないチラシ収入の一部を販売会社が店主からぼったくる構図まで浮かび上がった。

 そのうちの1つ、山陽新聞の販売店の例では、実部数1579部(別途、押し紙295部)に対し、イトーヨーカドーや中国電力といった大手企業が51%増しにあたる2400部分のチラシ料金を支払わされていた。偽装配達による「チラシ詐欺」がまかりとおっているのだ。

 6月16日、山陽新聞・岡輝販売センターの元店主である原淵茂浩さんが、山陽新聞社とその販売会社に対して、約2700万円の損害賠償を起こした。原淵さんは新聞社の「押し紙」政策に強い憤りを感じている。

 「わたしは数ある業界の中で、新聞業界が最も悪質だと感じています。無駄な新聞の買い取りというあまりにも異常なことを強要されたので、その責任を取ってほしいという思いで提訴したのです」

 押し紙とは、立場の強い新聞社側から販売店が強制的に購入を押し付けられる分で、配達されずに廃棄される紙だ。山陽の原淵さんの「押し紙」率は、10%程度。といっても中央紙と比較して低いということであって、損害賠償の請求額は2500万円を超えており、決して軽視できる数字ではない。

 原淵さんのケースでは、あるひとつの特徴がある。それは山陽が補助金を支給していなかった事実である。なぜ中央紙では慣行になっている補助金の支給が、山陽ではなされていないのだろうか?わたしが注目したのは、岡山県内における山陽のシェアは63%もある事実である。この数字は、他紙と比べて圧倒的に抜き出ている。つまり紙面広告の競争に於いて山陽は、ほどんど独占的な地位を占めていると考えてもいい。

 となれば、ABC部数をかさ上げする意味があまりないのではないか。ある広告関係者がある。

 「ABC部数を広告のクライアントに示す意義は、ライバル社と比較して、自分たちの方がより高い数字であること示すことなんです。広告の価格よりも、こちらの意義の方が大きいと思います」

 山陽のシェアが他社よりずば抜けて高いので、紙面広告の営業では他社を寄せ付けない強みがある。こうした状況の下では、補助金を支給して「押し紙」を買い取らせ、ABC部数をアップする必要があまりないのだ。

 だが、この裁判で明らかになったのは、山陽が「押し紙」以外に、ある悪質な方法によっていわく付きの収入を得ていたことだった。

 販売店に搬入されるチラシの枚数は、新聞の総部数に準じるのが日本の新聞業界の慣行になっているが、山陽のケースではチラシの搬入枚数が総部数をはるかに上回っているのだ。たとえば2006年の5月における岡輝販売センターにおける総部数、実配部数、「押し紙」はそれぞれ次のようになっている。

 総部数  :1874部
 実配部数 :1579部
 「押し紙」: 295部

 本来であれば、総部数の1874部に準じた枚数のチラシを搬入する。「押し紙」があれば、これさえもチラシの水増し行為になるが、山陽の場合は、さらに総部数を上まわるチラシを搬入しているのだ。たとえば上記のデータに対応する2006年、5月17日から、19日までの「折込広告納品書」によると、チラシの枚数は次のようになっている。主なものを抜粋してみよう。「押し紙」を含む新聞の総部数である1874部を遙かに超え、実部数に対しては5割増にもなっている。

 広告主 チラシの枚数
 ラブドラッグス 2200枚
 ミスタードーナツ 2200枚
 イトーヨーカドー 2400枚
 スーパーハリウッド 2400枚
 中国電力 2400枚

 驚くべきことに、こうして得た収入の一部を、販売店に新聞を販売する「販売会社」などが吸い上げる仕組みになっているという。販売店がチラシの水増しをして得た収入が、すべて販売店の収入になるわけではないらしい。販売店との商契約の条項にも、次のように明記されている。

 甲(山陽新聞販売)は毎月5日の朝刊定数(総部数のこと)を基に折込定数料を算定し、原則として翌月5日に乙(店主)に支払う。

 総部数を上回るチラシ分の水増し料金は、山陽新聞販売が吸い上げるということのようだ。原淵さんが堂々とチラシ詐欺を告発するゆえんである。

(黒薮哲哉)


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