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2008年07月14日(月) 12時13分

<布川事件>「自白偏重」に警鐘 東京高裁判断毎日新聞

 布川事件の再審開始決定を支持した東京高裁の判断は、再審の「冬の時代」とも言える近年の厳しい司法判断の流れに雪解けをもたらした。今回の決定に対し、検察側は特別抗告できるが、再審事件で最高裁に認められたケースは過去になく、決定は極めて重要な意味を持つ。

 「疑わしきは被告の利益に」という刑事裁判の鉄則を再審事件にも適用すべきとした最高裁の「白鳥決定」(75年)以降、80年代までに日本弁護士連合会が支援した再審事件の無罪確定は10件に上り、一時は再審の扉が広く開かれた。

 しかし、90年代以降、再審で無罪になったのは「榎井(えない)村事件」(高松高裁、94年)の1件のみ。その後、「日産サニー事件」(仙台高裁で95年取消)、「大崎事件」(福岡高裁宮崎支部で04年取消)、「名張毒ぶどう酒事件」(名古屋高裁で06年取消)と一度は再審開始決定が出たにもかかわらず、検察の即時抗告や異議申し立てで覆るケースが相次いだ。

 多くのえん罪事件と同様に、布川事件も物的証拠がなく、自白偏重の捜査が行われた。取り調べの全面録音・録画(可視化)の議論も高まる中、警察や検察は不当に自白を強要することのない適正な捜査を肝に銘じなければならない。【伊藤一郎】

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